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(2024年10月10日)
中国へ進出している日系企業の動向が変化しています。日系企業はコロナの影響で一時は12000社まで減少しましたが、コロナ収束後には増加に転じ2024年には13000社に達したという事です。しかしこの数字はコロナ前のピーク時には及ばず完全な回復には至っていませんでした。内容を見ますと内陸部への進出が増加しているのに対して、上海などの沿岸部では減少が顕著であり地域間での動向に変化が生じている状況です。コロナ禍で多くの企業が中国への依存を見直し、中国での事業の見直しや事業再編、また海外拠点を他のアジア圏へ移管するなどの動きが出てきています。 コロナ後の日系企業の中国進出を業種別にみてみると、サービス関連の第三次産業の進出や建設業の進出が増加しているのに対し、製造業の撤退が増えているという事で、中国を市場として投資を続けてきた日系企業の投資実態が大きく変わってきました。皆さんの企業に置かれても同様の変化に対応されている状況ではないでしょうか。 日系企業の中国進出は1980年代には世界第一位の人口を抱える中国を「世界の工場」ととらえて安い人件費で豊富な労働力を得られる中国に進出したことがスタートです。1990年代に入ると「世界最大規模の市場」として更に製造業を中心に進出が加速し、日本をはるかに上回る巨大な市場に参入していった経緯があります。しかし近年は円安の影響、人件費、インフラの高騰によりコスト面での変化が大きい事、又環境規制の強化などで「製造、輸出基地」としての魅力が低下しています。またコロナ禍での中国政府のロックダウン政策で長期の操業停止や物流・供給網の寸断等を余儀なくされる等のカントリーリスクを経験したことで、将来に向けたビジネスビジョンを見直す企業が多くなったことは当然の方向でしょう。 中国のカントリーリスクはこれだけでなく、新たに施行された「反スパイ法」により現地従業員の安全確保の課題、アメリカによる中国に対する規制強化なども背景に外資企業の中に中国に市場に対する不安が募り、欧米企業を中心に「脱中国」の動きが進んでいるというのが現状です。中国進出日系企業はこれまで製造業を中心に拡大路線でここまで来ましたが、大きな転換期に来ていると言って良いでしょう。
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