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第1015回 中国語政策の話

(2022年4月14日)

 中国語学習者が最初に手をする中中辞典といえば、新華辞典。筆者も半世紀前、ビニール表紙の緑色をしたポケットサイズ新華辞典を愛用した記憶があります。2019年10月26日の人民日報にその沿革を記した記事が掲載されましたので、まずその概要を見てみましょう。それによると、新華辞典は、新中国成立後、最初に出版された白話辞典で、三世代以上の中国人が手にし、これまでに6億冊以上も発行され、10回も改訂されています。       
 新華辞書社が設立されたのは1950年8月のこと。新華辞典は、当時の出版署副署長だった、かの有名な葉聖陶指揮の下、1953年に人民教育出版社から初版が発行され、1957年以降は商務院書館から発行されました。当時の中国は人口の80%以上が字を読めず、識字運動はまさに国家の発展を図るうえで焦眉の急でした。当時、党中央から提起された言語文字政策の三大任務は、漢字改革、普通話の普及、漢語の規範化で、これらの面で新華辞典が果たした役割は測り知れないほど大きいものでした。
 爾来、70年余り過ぎましたが、中国にとって言語政策の重要性は一貫しています。中国は多民族・多言語国家ですから、国家通用の文字言語は国家としてのアイデンティティにもかかわります。その意味で、2000年10月に成立した<中華人民共和国通用言語文字法>は法律によって普通話と規範文字を国家通用言語文字に規定したもので、その後、これを基礎に言語文字の基準化、情報化が推進され、一連の基準も打ち出されました。70年前、人口の80%以上が字を読めなかったのが、今では人口の80%以上が字を読めるようになったのは持続した努力の賜物です。1998年からは、毎年9月第三週が「全国普通話宣伝週間」に指定され、その後四半世紀にわたり、普及の努力が行われてきました。
 しかし、一方で、中国語における文化的素養の低下、少数民族言語研究の基盤の脆弱さ、外国語教育の範囲とレベルもまた問題になっています。現在提起された三つの課題は、①普通話と、漢語方言・少数民族言語・外国語との関係を構築して、普通話を国際通用語にすること ②国民の言語能力を強化し、家庭と学校での指導で、普通話・方言・外国語の運用能力を高めること ③世界の主要言語20種と一帯一路沿線諸国の200種の言語を操り、中国のグローバル戦略を支える人材の育成です。

次回は4月21日更新予定 テーマは<中国の金融センター>です。

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