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第1024回 陸のシルクロードとウクライナ問題-その3-

(2022年6月23日)

 ウクライナ問題の影響は、すでにウクライナを目的地あるいは経由するルートが現在停止中になるといった直接的影響が出ていますが、ロシア、ベラルーシなどを通る主要ルートにも暗い影を投げかけています。ヨーロッパ諸国では、中欧コンテナ鉄道輸送の玄関となっているポーランドやドイツ、さらにその延長上にある諸国に甚大な影響を与えることはもちろんですが、中国が近年、粒粒辛苦して築き上げてきた中欧・東欧諸国との関係にも甚大な影響を与えます。中・東欧諸国とは2012年に中国-中東欧諸国協力(16+1)を発足させ、翌年にはギリシャも加入、その後年々経済交流を活発化させ、第13次5か年計画終了年の2020年には、中国-中東欧諸国貿易額が1000億ドルを突破しました。こうした動きを受け、2021年2月には、中国-中東欧諸国首脳サミットで88件の文書に合意、同年第一4半期には中国-中東欧諸国貿易額は前年比5割増となり、5月には中国-中東欧諸国博覧会が寧波で開幕し、盛況が伝えられました。また、中国は、世界的なエネルギー構造転換の追い風を受け、得意の太陽光発電建設を各国に売り込み、すでにハンガリーやポーランドなどで実績を積みつつありました。       
 陸のシルクロード上にある中央アジア諸国との関係も飛躍的に発展していました。これらの国々は、陸のシルクロードの経由地であるとともに目的地でもあり、海への出口のない諸国にとっては新たな生命線であり、且つまた、中国という巨大なエネルギー・農産物消費市場への貴重なルートでもあります。また、旧ソ連帰属地域の再統合を進め、ユーラシアランドブリッジを構築しようというロシアのユーラシア同盟構想と重複する国々は、上海協力機構と天秤にかけながら、自国の独立性を担保する拠り所でもあります。2020年7月には、中国と中央アジア5か国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)の外相会議や、上海協力機構加盟国政府首脳理事会第19次会議が開催され、翌2021年5月にも中国+中央アジア5か国外相会議が開催されるなど中国はこれらの国々の取り込みに躍起になっていました。そういう中、2022年は1月に中国-中央アジア5か国国交30周年を迎えることもあり、中国は関係のさらなる飛躍を期待していました。
 これらの努力に頭から冷水を浴びせたのがロシアのウクライナ侵攻でした。続きは次回に。

次回は6月30日更新予定 テーマは<陸のシルクロードとウクライナ問題-その4->です。

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