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第1032回 北京冬季オリンピックの残したもの

(2022年8月18日)

 北京冬季オリンピックが終了して半年が過ぎました。ここで、その残したものについて振り返ってみましょう。北京冬季オリンピックのスローガンが募集されたのは2020年5月のこと。同年9月までに79件の応募があり、審査の結果、「一起向未来」(ともに未来を目指そう)に決まりました。世界がコロナの蔓延に悩む中、その連帯を呼びかけた側面もあります。       
 中国にとって、今回の冬季オリンピックの最大の遺産は、国威発揚より、これをきっかけに盛んになった、氷雪スポーツ・氷雪産業の勃興と発展でしょう。政府は2015年の冬季オリンピック招致成功後、直ちに<氷雪スポーツ発展プラン2016-2022>や<全国氷雪運動施設プラン2016-2022>を策定、その結果、2018-19年の冬季シーズンには延べ2.24億人が氷雪観光に繰り出しました。また、冬季パラリンピックの開催を契機に、身障者の氷雪スポーツ参加に対する意欲も急上昇しています。
 ソフト面でもこのオリンピックが契機になって発展し始めたものがあります。それは調理用ロボットです。冬季五輪の会場に導入されたことと人材不足をきっかけに急速に拡大し始め、上海愛餐機器グループは、中国の外食大手や日本の「大阪王将」にロボットを納入、その市場は2023年には日本円で27兆円にも上ると予測されています。
 ソフト面のもう一つの収穫は大会ボランティアの活動でしょう。とにかく政治面から焦点を当てる論調が多いのですが、この大会でのボランティア、特に若者たちの協力は手放しで称賛されていいでしょう。選手たちからの感謝の言葉も多く、また、彼ら自身も多くの感動を得たはずです。2月4日の開会式、河北省阜平山区からやってきた、白い装束に赤い頭巾をかぶった44名の可愛らしい子供たちの合唱に目を細めた大人も多かったことでしょう。オリンピックがこうした純粋な思いを汚さないよう祈るばかりです。
 オリンピック開会が目前に差し迫った2022年1月21日の人民日報に、「2022年冬季オリンピック、パラリンピック遺産報告集」という記事が掲載され、①ウインタースポーツ、②氷雪産業、③ボランティアと障碍者救助、④関係都市、⑤関連施設、⑤環境対策、⑦地域全体という七つの面の発展に成果を残した、という専門家の分析が示されましたが、最大の遺産は、スローガンにある「一起向未来」とボランティアによる国や民族を超えた友情でしょう。

次回は8月25日更新予定 テーマは<北生物保護の本格化>です。

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