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第1037回 加速する技術者の育成-その1-

(2022年9月22日)

 1990年代の第一次高度経済成長期を経て21世紀にはいると、中国は、下請けを中心とした世界の製造工場としての立場を脱却して先進工業国の仲間入りを目指すようになり、一方では研究開発に力を入れつつ、一方では優れた技術者の養成と技術の継承革新に取り組み始め、2010年には正式に技能五輪国際組織委員会に加盟、2011年に初めて技能五輪国際大会に参加し、また、<国家高技能人材振興計画実施方案>も策定しました。
 こういった流れを受け、2010年代半ばごろから、新興経済大国に見合った“大国工匠”の養成がしきりに唱えられるようになり、2015年のメーデー休暇期間、CCTVは「大国工匠」シリーズを放映、2016年(第13次5ヵ年計画「2016-2020」初年)の人民日報には「“工匠精神”は製造の魂」、「イノベーションに“能工巧匠”は欠かせない」、「“工匠精神”の継承」、「企業はいかにして“工匠”を育成するか」といった“工匠”関連記事が溢れました。地方でも、広東省の仏山市は100日間の熟練技術者捜索キャンペーンを実施、30名を選抜し、“大城工匠”と命名した、と報道されました。
 では、政府は当時、どういった取り組みをしたのでしょうか。2015年8月、財政部は、北京市・天津市・内モンゴル自治区・遼寧省などの地域を<企業新型学徒制>のテスト地区とし、それぞれでいくつかの中・大企業を指定し、企業ごとに100名を学徒制訓練に参加させました。この制度は、働きつつ学ぶという新しい形式をとり、企業と学校が提携し、実習と学習を一体化させたもので、その後、各地に波及していきました。第12次5ヵ年計画期間中に、中国は1385回の高級技術研修プロジェクトを実施、120カ所の国家専門技術者人員継続教育基地を建設してきましたが、2017年、国務院は<科学教育興国戦略><人材強国戦略><革新駆動発展戦略>の重要な支えとして<新時期産業労働者層建設改革方案>を策定、技術者養成を全面的に推進する基盤を整え、さらに、上述の<国家高技能人材振興計画実施方案>を全国的に推進し、2020年末までに、全国各地に1000個所の「技能大師工作室」を建設し、優秀な技術者による後進の指導を行うことにしました。同年6月、技能五輪国際大会を中国に招致するための自主的活動として、上海と杭州で中国国際技能大会が開催されたことは、技術者育成に賭ける中国政府の意気込みを象徴していると言えましょう。続きは次回に。

次回は9月29日更新予定 テーマは<加速する技術者の育成-その2->です。

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