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第1039回 2022年上半期の経済状況-その1-

(2022年10月6日)

 2022年の経済状況を見る前に、コロナ二年目の2021年はどうだったのでしょうか。同年12月に開催された中央経済工作会議では、当面中国が直面している三大試練として、需要の収縮、供給の打撃、先行きの不透明感を挙げました。世界的なコロナショックの中、2020年には世界で唯一実質的成長がプラスだった中国も、2021年上半期には厳しい状況に置かれ、年間では予想以上の成長を達成したものの、2022年も引き続き“穏”(安定第一)を目標に掲げざるを得ませんでした。目標達成には財政政策と通貨政策の協調が不可欠であり、とりわけ、就職・民生・市場主体(特に中小企業)に重点が置かれました。
 2022年春の全人代政治報告では、積極的な財政政策の強化に合わせ、年間約2.5兆元(50兆円)の減税免税による中小零細企業のバックアップが謳われました。また、一般公共予算は前年比2兆元(40兆円)拡大され、中央から地方への交付金も1.5兆元(30兆円)増加され、さらに中国人民銀行は貸出金利を引き下げて企業融資をバックアップしました。これらの政策の主要目的の一つが雇用の確保であることは言うまでもありません。
 しかし、皮肉なことに、冬季オリンピックが終了し、全人代が開催された3月を境に中国経済は急降下し始めました。ロシアのウクライナ侵攻が国際経済に与えた衝撃と、全国30の省レベルに蔓延し、累計32万人以上に患者が拡大したコロナの影響により、消費・雇用・投資・工業生産が大きく落ち込み、飲食業、小売業、観光業、鉄道道路水運などの運輸業、航空業、などが大打撃を蒙ったのです。特に観光業の落ち込みは大きく、中国旅游研究院によると、国内観光収入はコロナ前の2019年同期の47%にとどまりました。3月のPMIは49.5%と前月比で0.7ポイント下落し、輸出は落ち込み、輸入も15.6ポイント下落して、前年同期比を下回り、政府が掲げた年間5.5%の成長という目標の達成に黄信号がともり始めました。
 2022年5月26日、人民日報は、経済日報編集部による<当面の経済情勢の包括的な弁証法的見解>という記事を転載しました。この文章は、4月29日に開催された中共中央政治局会議における習近平の指示を踏まえ、この3月以来、中国経済が直面している危機を認めつつ、一方で中国の底力が容易に揺らぐものではないことを力説したものでした。その内容と4月以降の動きはまた次回に。

次回は10月13日更新予定 テーマは<2022年上半期の経済状況-その2->です。

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