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第1056回 環境政策、最近の動き-その1-
(2023年2月9日)
2015年の18期五中全会で習近平総書記は「生態環境、特に大気・水・土壌の汚染は深刻で、小康社会実現の重大なウイークポイントである」とし、環境の質の向上を2020年までの第13次5カ年計画における重要課題として提起し、これに呼応して2020年末までに①生態環境全体の質の改善 ②主要汚染物の排出総量の大幅な削減 ③環境リスクの効果的抑制 ④生態環境保護と小康社会実現目標との整合性が総合的目標に置かれました。一方、2015年1月から施行された新環境保護法は、法的責任を強化し、処罰を重くし、環境保護部門に排出基準を無視した企業を操業停止にするなどの権限を付与しました。厳格な生態資源保護制度、環境損害賠償制度、政府環境責任追及制度を導入したことで、全国的に厳しい取り締まりが展開されました。こうした取り組みにより、<2019中国生態環境状況広報>によれば、全国的に生態環境の質が改善され、大気汚染では、337の地級市レベル以上の都市の平均優良日が82%に達し、淡水の質も、劣Ⅴ類が3.4%と、前年比3.3ポイント改善しました。
2020年5月に制定された中華人民共和国最初の民法典では、生態環境の損害に関する修復、賠償規則が明確に規定され、同年6月には、政府が<生態環境領域における中央と地方の財政資金運用支出権分担改革方案>を打ち出し、地域を跨ぐ生態環境保護といった面における中央政府の運用権を強化し、地方政府には、財力に応じた安定的な制度を構築して、生態環境の整備を財政支出の重点領域とするよう促しました。また、中国科学院は、2013年に打ち出したGEP(生態系総生産)という概念に関する算定方法を確立し、青海省をモデルに実証研究を行った結果を発表、生態系による産物とサービスを提供した者及びその受益者に関する生態上の関連性を定量的に示し、生態保護に対する評価や生態保障政策の制定に科学的根拠を提供することを可能にしました。
生態環境保護に関する大プロジェクトの一つが、2017年に提起された長江経済ベルト各省やその源流の青海省が協力する<三線一単(生態保護レッドライン、環境の質ボトムライン、資源利用上限ライン、生態環境参入リスト)生態環境区分け制御プラン”>でしょう。2020年には関係各省が次々とその体系を確立、現実的な運用へ踏み出しています。