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第1065回 不動産業へのテコ入れとその問題点
(2023年4月13日)
2023年の第一四半期は、中国不動産業界の動向が新聞を賑わせました。不動産バブルと投機の過熱を防ぐために2020年に策定された資金規制が、不動産開発企業の資金不足を惹起し、その結果、工事の中断が相次ぎました。物件の引き渡しが先送りになったことから、昨年夏に購入者たちがローン返済を拒んで大騒ぎになった事は、日本でも大々的に報じられました。ローンの返済がスタートしているのにいまだ引き渡されていない住民は188万人にも達しています。そこで中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会は、昨年9月に年内限定で認めた「住宅金利を政府の決めた下限より低くしてよい」という決定を、今年の1月5日に「新築住宅の販売が低迷する地方都市では恒久化してよい」と決定した。2022年12月時点で対象となりうる主要都市は33都市ですが、今後はさらに増えていくと予想されます。
不振を極める不動産企業に対する資金融資も大転換され、中国人民銀行や中国工商銀行などが続々と大手企業と融資契約を結び始めました。こうした動きは、これら不動産企業の株価へも敏感に反映され始めましたが、この事実は、言葉を変えれば、「経済を回復させるには、結局はGDPの30%を占め、広い裾野を持つ不動産市場に頼らざるを得ない」ことの表れであり、これまで努力してきたバブル抑制政策が挫折したことを意味します。また、政府系不動産企業と民営不動産企業との間で救済の度合いや土地の調達力の差が鮮明になり、業界の発展に禍根を残すとともに、これまでも指摘されていた地方政府と政府系不動産企業の癒着を規制できるのかも問題として残ります。また、2021年に債務不履行となった恒大集団の問題も先送りになったままです。
2022年、新築物件の価格が14年ぶりに下落して話題となりましたが、2023年1月になると主要70都市のうち36都市、全体の51%で上昇しました。この点から見れば薄日が差してきたとも言えそうですが、一方で政府の金利の大幅な引き下げによって、住宅ローンの前倒し返済が急増しつつあります。借り換えることで金利負担を減らすためです。こうした動きが後半に広がれば、銀行は金利収入が低下する恐れがあり、今、その対策に大わらわになっています。次回は、国内の住宅事情を絡めた動きを見てみましょう。