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第1066回 住宅事情の動き

(2023年4月20日)

 現在の中国は都市化が急速に進みつつあり、それに伴い、都市の人口も増大、住宅需要は底堅いものがあります。これに対処するため、政府は様々な策を講じています。まず第一は旧式の住宅の改造です。現在、都市部では2000年以前に建てられた団地がたくさんあります。狭くてお粗末で安全面でも問題が多いこれらの老朽家屋の改善はまさに焦眉の急。いうなれば、中国の多くの都市が住宅設備を更新しなければならない時期に突入しています。
 そこで、2022年2月、住宅及び都市建設部の王蒙徽部長は記者会見で、2022年一年間で、低価格賃貸住宅240万戸と新規低価格公共住宅10万戸を建設、スラム地区の改造は120万戸、安全上問題のある天然ガスパイプラインの改造は2万キロといった計画をぶち上げました。中でも格安賃貸住宅の建設は農村から流入した新都市住民や若者たちの住宅を解決が目標で、北京・上海・広州などの重点都市では、これらの住宅は新規増住宅の40%以上を占めるようになりました。住宅の改造では、水道・電気・天然ガス・暖房・通信などのパイプラインやケーブル、またエレベーターの設置などに重点が置かれ、さらに地域を下支えする養老サービスなど、地域コミュニティにおける設備の充実も図られるようになりました。
 ただ、こうした動きは、政府の予算内だけでは到底カバーできるはずもなく、その意味で、これらの分野をいかに民間に開放し、民間資金の参入を呼びかけ、持続可能かつ計画的な発展を図るかが喫緊の課題となってきたのです。
 前回で述べた建築業界が抱える様々な問題は上述の計画推進の大きな障害になりかねません。このことを踏まえ、2023年1月、住宅及び都市建設部の倪紅部長は、2022年12月の中央経済工作会議で改めて住宅は住むためのものであることが強調され、経済金融面のリスクを解消しつつ、着実な発展を目指すべきことが示唆されたことを踏まえ、信頼の構築とリスク回避、並びに、「住まいがあるかどうか」から「よい住まいがあるかどうか」への不動産業界のモデルチェンジが必要であると訴えました。
 賃貸住宅にも新たな問題生じています。ある日突然家主から立ち退きを命じられるなど、長期賃貸の保障がないことです。長期賃貸の平均契約期間は、ドイツ11年、日本5.2年、イギリス2.5年に対し、中国は1年、これでは安心して住むことがでないでしょう。

次回は4月27日更新予定 テーマは<2023年春の全人代>です。

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