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第1068回 2023年春の全人代-政策(1)-

(2023年5月4日)

 李克強首相による政府活動報告では、まず2022年を回顧し、各項目の前年比の伸びを示した数値が示されましたが、GDPは3%と当初目標の5.5%前後を大きく下回り、都市部就職者の新規増加は206万人と示されましたが、実は若年失業率は前年比で3ポイント増加して17.6%へと悪化し、物品輸出入総額も2021年の21.4%増から7.7%増へと急ブレーキがかかりました。その結果、2022年には高所得国の仲間入りをとされていた一人当り名目国民総所得は世銀の基準に達せず、上位中所得国に止まりました。もちろんその主要原因に挙げられるのはコロナの影響で、対策費は2022年一年間で6兆8000億円相当にも上ると試算されています。それは特に地方政府にダメージを与えており、歳入に対する負債の割合はとうに100%を超えています。
 こうした点を踏まえ、同報告では直面する課題として、①グローバルな経済環境の悪化と外部からの圧力 ②国内需要不足 ③中小・零細企業など民間企業の困難 ④雇用問題 ⑤地方政府の財政難 ⑥不動産市場のリスクと関連金融機関のリスク ⑦イノベーションへの取り組みなどを挙げています。そして今年の数値目標として、①経済成長率5% ②都市部新規就業者数1200万人 ③都市部調査失業率5.5% ④消費者物価上昇率3% ⑤住民所得と経済成長率の一致 ⑥食糧生産量6億5000万トン以上を挙げています。
 次に目標を達成するための重点施策8項目が示されましたが、主な内容は2022年末の中央経済工作会議の「5つの重点経済任務」を踏襲したものです。(1)「国内需要の拡大」。消費の回復拡大を最優先に、都市と農村の住民所得の向上、大口消費の確保と生活サービス消費を推進する。政府は地方政府に対し新たにインフラ債約75兆円相当を用意するとともに、第14次5ヵ年計画の重要プロジェクトの前倒し実施や都市のリニューアル、地域協力の促進、民間資本の国家プロジェクトへの参加を奨励する。(2)「現代化産業システム建設の加速」。重点製造産業の生産チェーンへ向けた優れたリソースの結集とコア技術の突破、重要なエネルギー資源や鉱物資源の探査・貯蔵・増産の強化、従来型企業や中小企業のDXや先端技術の開発応用の推進、現代化物流システムの構築、デジタル経済への注力、プラットフォーム経済の発展への支援などを行う。(3)「『2つの揺るぎなさ』(国有企業の発展と強化)の実施」。国有企業の改革と革新的競争力を向上させ、中国独自の国有企業コーポレートガバナンスを整え、民営企業とその経営者の権利を守り、中小零細企業及び自営業者の発展を後押しする。(次回へ続く)

次回は5月11日更新予定 テーマは<2023年春の全人代-政策(2)->です。

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