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第1070回 2023年春の全人代-取り巻く状況と課題-

(2023年5月18日)

 2023年に入り、1~3月はPMI(製造業購買担当者景気指数)が50を超えるなど景況感は改善に向かいました。ただ、その勢いはまだ弱く、ふらつきも見られます。物価の伸びは大幅に鈍化し、特に耐久消費財の回復は鈍く、家電・自動車・スマホなどは軒並み前年同期を下回りました。消費も移動制限なしの春節で関連消費が伸びたものの、庶民の貯蓄志向はまだ根強く、耐久消費財はやはり減少、不動産開発投資もマイナス続きのままです。また、1~2月の貿易輸出額は欧米の景気減速の影響を受け、前年同期比で6.8%も下回りました。特にアメリカ向けは22%減、EU向けは12%減でした。輸入額も10.2%減で、国内の消費意欲の未回復を象徴しています。それらを一部補ったのが対ロシアで、輸出は2割、輸入は3割増を記録しました。
 経済回復の足を引っ張っている諸課題の一つは地方政府の赤字財政でしょう。全国各地で、財政ひっ迫による医療補助の削減、路線バスの運行廃止などの措置が民衆の不満を引き起こしています。またそれに連なる不動産企業の巨額債務問題や地方銀行の金融リスクも深刻で、3月16日に発表した党と政府の機構改革案の中では、党に中央金融委員会を設置し、金融安定に向けた指導力を強化するとともに、国務院には国家金融監督管理総局を設置することとしました。地方政府の債務救済に今後どのような措置が講じられるかが注目されています。その一方で景気回復を図るカンフル注射として、同月27日には預金準備率を0.25%引き下げ、約10兆円相当を市場に放出しました。5%前後の経済目標達成のための布石とも言えましょう。ただ、全体として見た場合、中国政府の債務は地方政府も含め対GDP比で90%以内と、200%以上の日本とは大差があり、財政赤字の拡大もわずかにとどめるとされています。
 上記の機構改革では、このほか、国務院の公安省と国家安全省などを党に新設する中央内務工作委員会に移管し、反スパイ法改正と連動させて、スパイ活動の監視を強める方針が打ち出されました。ハイテク部門への監視強化も含め、共産党の完全支配による警察国家の完成と言えましょう。
 巨大な市場を抱え、市場の対外開放を謳いつつ、厳しい規制で共同富裕を図る習近平政権、それを支えるのは、他国を圧倒する先端技術の開発であり、その勢いは加速しています。

次回は5月25日更新予定 テーマは<中国の伝統技能から>です。

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