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第1072回 医薬品の品質問題

(2023年6月1日)

 7年前、2016年春の人民日報に「風邪薬は日本へ行って買わなければならないのか」という記事が載りました。日本に来て医薬品、特に風邪薬を爆買いする、といった現象が見られたころです。中国国内で生産していないわけでもないのに日本で買う、即ち、中国の風邪薬が信用されていなかったからです。遡る2012年に国務院は<国家薬品安全“十二五”計画>を出しましたが、その効果はとても満足できるものではありませんでした。それでも2015年、2016年にはジェネリック医薬品の統一評価による品質保証に取り組む姿勢を示し、2018年には初めて17品種が統一基準をパスし、医療費負担の軽減に寄与しました。また、2017年には中国薬品トレサビリティ連盟も北京で成立しています。
 2021年、国務院は習近平の指示を受け、<薬品監督管理能力の全面的構築に関する実施意見>を通達しました。その内容は、①関連法規を整備し、政府が主導し、企業が主体となり、社会が参画する薬品監督管理体制の整備 ②中薬・ワクチンなどの審査機構の設置、新たな技術・薬品の開発 ③検査体制と事案処理システムの確立 ④検査技術の向上 ⑤ビッグデータなどを駆使した情報のデジタル化 ⑥薬品監督管理の国際化と技術的向上、関連人材の育成、先進的モデル地区の設定などで、当時当面の急務であったコロナ対応を色濃く反映しつつ、長期的視野も盛り込んでいました。翌2022年11月には人々が安心して薬を使えるよう、2007年版を改定した、5章3条に上る新しい<薬品リコール管理規則>も施行されました。こうした措置は主として中薬を対象とした文言が多く、中薬の役割の高さと、中薬における偽物粗悪品の弊害がいかに大きいかを示しています。同規則では、回収された薬品に対する違法な処理行為にも言及し、これを厳しく禁止しています。
 農村は医療が立ち遅れ、インチキな中薬が特に横行していたのですが、一方で中薬は副作用が西洋医薬の四分の一以下とも言われ、効果の高い薬もたくさんあります。ただ、それが末端医療に届いていなかったのも事実で、良い薬が十分に出回れば、中薬の役割は十分期待されます。そのほか、ネットやコンビニで売られている薬、期限切れの薬の弊害、インチキ健康食品や化粧品も問題になっており、ここ数年では子供用化粧品の品質も大きな問題になり、管理が強化されています。

次回は6月8日更新予定 テーマは<治安体制の強化>です。

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