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第1080回 中国の世界遺産にまつわる話

(2023年7月27日)

 中国は1985年に<世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約>に加盟、2021年には『泉州:宋元中国の世界海洋商業貿易の中心』が世界遺産に登録され、中国の世界遺産は56になり、世界第二位をキープしています。この10年だけを見ても15件増加、特に、2014年には『シルクロード:長安-天山回廊の道路網』と『大運河』が同時登録されました。
 大運河が登録されたのを知った頃、私は、今後本格的に観光整備が始まると予測し、何とかその前の様子を見ておきたいと思いましたが、どこの旅行社も大運河ツアーはまだありません。そこで自ら観光団を組織し、北京-天津-聊城-梁山-濟寧-曲阜-徐州-淮安-揚州-鎮江-上海と見て回りました。当時、北半分は、溝が残ってはいるものの水は全くなく、ほぼ雑草とゴミ溜りになっていました。一方、南半分は水路としての働きを十分果たし、貨物を積んだ船がせわしく行き交っていて、南船北馬を実感しました。
 その後、2020年以降、人民日報に大運河復活への本格的な取り組みを示す記事がたびたび登場し、運河の全面的な改修、川沿いの湿地の回復、博物館の整備などが進められるようになりました。大運河は京杭大運河・隋唐大運河・浙東運河で構成され、全長3200キロ、2500年余りの歴史を持ちます。2022年4月には京杭大運河の北京・河北両区間62キロが水上観光ルートとして再生しましたが、今後さらに復活の度合いを深めていくことでしょう。
 一方、ここ一年、関連記事が急速に増加したのが2012年に登録予定リストにアップされた<北京中軸線>。北は鼓楼に始まり南は永定門に至る、全長7.8キロの北京中軸線は古都北京の骨格をなしています。2022年5月、北京市は北京中軸線の保護と世界遺産申請に法的保証を与えるため、<北京中軸線文化遺産保護条例>を承認、10月1日より施行しました。また、2023年1月には<北京中軸線保護管理プラン(2025-2035)>も実施され、中軸線の遺産エリア・緩衝エリアなど、保護地域が明確に定義されました。元代から今日までおよそ700年以上の歴史を持つ中軸線上には、天壇・天安門・故宮・景山などが連なり、故宮・天壇・万寧橋はそれそれがすでに世界遺産になっていますし、毛沢東記念堂もまたその線上にあります。中国の都市建設における南北の中心軸とそれをはさんだ左右対称は既に北魏、孝文帝による洛陽の建設に始まり、隋唐、また、日本にも影響を与えていったのです。

次回は8月3日更新予定 テーマは<漁業、最新の話題>です。

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