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第1082回 農村の発展と伝統の継承

(2023年8月10日)

 2023年3月、新たに1336の村が、中国伝統村落にリストアップされ、過去の5回分と合わせ、合計8155の村落が国レベルの保護リストに登録されました。このプロジェクトは、政府の<中国伝統村落認定保護事業実施に関する通知>に則ったもので、2023年9月末が期限とされています。その発端は、2012年に政府が行った伝統村落の調査で、これまでに53万9000棟の歴史的建築物と伝統的な民家が保護され、併せて4789件の省レベル以上の非物質文化遺産の伝承発展が図られました。
 多くの農民が都市に流入し、農村の常住人口が減少したこと、とりわけ農村の文化伝統を受け継ぐべき青壮年層が希薄になり、残されたのは空き巣老人や留守児童ばかりになりました。これでは、生産技術のみならず、様々な伝統的農村民俗・農村文化の継承が途絶えるのも無理はありません。伝統的村落を守りつつ、農村の生活を豊かにする一方、経済的レベルを向上させる、この伝統と現代という二つのファクターを如何に融合させるかが政府に突き付けられているのです。一部の地域では既に、農民に従来の居住地に定着して伝統的な生産に従事したり、新たな栽培に取り組む一方、農村グルメやアグリツーリズム、地域の歴史や文化と結合させた“文旅”(歴史文化観光)を開発している農村も現れ始めましたが、また一部の地域では、指定されたがゆえに修理もままならず、行政側は指定しただけで何の援助もしないため、農民が困窮している例もあります。また、指定されたことで、文化的価値の高い彫刻などがかえって盗難に遭ってしまうといった例も報告されています。
 雲南省紅河ハニ族イ族自治州のある村には60軒余りの農家が居住しています。ハニ族の伝統的な村落がほぼ完全な形で保存されていたため、2014年に伝統村落のリストに加えられました。農民たちの居住はそのままに、家屋の外見を変えずに内部の居住環境は改善し、エコツアーを推進、伝統の保存と生活の向上を見事に両立させています。
 中南大学の中国村落文化研究センター主任の胡彬彬教授は、これまで5000余りの伝統村落を回り、その保護に尽力してきました。2016年、同教授は湖南省江永県の地上建築で、なんと380㎡に及ぶ大壁画「水竜祠壁画」を発見しました。また、古代の制度を知る貴重な碑文も発見し、散逸や破壊を免れました。
 伝統村落の保護はまさに時間との闘いとも言えるのです。

次回は8月17日更新予定 テーマは<農村生活の変貌>です。

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