企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第1084回 心の健康

(2023年8月31日)

 2023年8月、中国国家統計局は「若年失業率など、年齢層で分けた失業率の公表を一時停止する」と発表しました。実は6月の16~24歳の失業率は21.3%の高率で、4月から6月にかけて人民日報にも就職問題の記事が溢れており、大学卒業生1158万人の就職がピークとなる7月の数字が懸念されていたのです。中国の学者も、潜在的若年失業率が46.5%になるのでは、という試算を発表しており、その深刻さが窺われます。
 政府は4月に就職施策の推進を鼓舞する通知を発表し、3つの項目を提示しましたが、その第二で、大卒者の就職・起業の道を広げる政策を示しました。具体的には、雇用を増やした企業へ助成金を交付するとともに、課文にも示されているような様々な職業、社区(地域コミュニティ)や農村での就職も奨励しています。また、国有企業の雇用拡大も奨励しており、まさに80年代中期のワークシェアリングを想起させる状況です。
 5月に入ると、人民日報には<あらゆる手を使って大卒者の就職を支援しよう>という記事を、6月9日にも<大卒者の就職・起業を一層しっかりと支援しよう>という記事を掲載、教育部も、雇用ポストを開拓し就職圧力を緩和するよう、<2023年大卒者就職促進ウイークキャンペーン>(5月26日~6月1日)を展開し、まさに総力戦の様相を呈しました。
 これに呼応し、各地域でも独自の取り組みが展開されました。江蘇省は十万人就職・研修ポスト募集計画を策定、これを支援するため、補助金支給や税の軽減も行いました。山東省は21ヶ条の具体的措置を発表、就職指導の質の向上にも努め、寧夏回族自治区では起業推進計画を推進する一方、公共機関の雇用枠を広げるなど10項目を示しました。しかし、いずれにせよ緊急避難的措置で新味に乏しく、経済の立て直しが早急に求められます。
 中国では、改革開放後、何度か就職難が顕在化した時代がありました。1960年ごろを中心に誕生したベビーブーマーたちの就職期となった80年代半ばで、その結果、個体企業経営が生まれ、二度目が90年代末期で、朱鎔基の政治改革と国有企業改革で多くのレイオフ者が誕生し、その結果、社会のニーズに合った様々な職業が生まれ、三度目は2008年のリーマンショックで、沿海地方の労働者が故郷で起業し、地場産業の発展を促しました。今回の就職難による起業が新たなスタートアップ企業をどれだけ誕生させるかも注目されます。

次回は9月7日更新予定 テーマは<>です。

バックナンバー一覧はこちら

三瀦先生のコラム