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第1088回 高まる食の安全意識-その1-

(2023年9月28日)

 日本の核処理水放出問題が日中間の新たな懸案としてクローズアップされていますが、この問題に対し様々な分析が行われる中、ある重要な視点が抜け落ちています。核処理水放出に対する批判に論理的裏付けがないことは大いに論じられなければなりませんが、中国政府及び国民の食の安全に対する近年の非常な高まりがその背景にあることは、一つの重要な要素として留意する必要があります。
 2017年は人民日報に食の安全に類する記事が溢れかえりました。それもそのはず、年明け早々、習近平が国務院食品安全委員会第四回会議において「四つの“最厳”」と称される重要な指示、すなわち「最も厳しい基準、最も厳しい監督管理、最も厳しい処罰、最も厳しい責任追及」を出したのです。同年は秋の党大会で習近平が総書記に再任された年で、言い換えれば、食の安全が新たな任期における最重要課題の一つとして認識されたと言えましょう。
 食の安全に対する取り組みはそれ以前も行われていたのですが、成果ははかばかしくなく、2017年7月に公安部が発表した食品安全犯罪取り締まり典型事案を見ても、有毒・有害な食品を生産・販売した事件が上海・河北・広西など各地から報告されています。また、電子レンジを使った食品を食べると癌になる、牛乳を飲むと癌になる、ケンタッキーやマクドナルドの鶏肉は遺伝子組み換えだ、食用ザリガニは死体を食べさせている、即席ラーメンはジャンクフードだ、等々、食品に関するフェイクニュースも蔓延しており、政府はこれらのフェイクを集め、注意喚起に大わらわでした。
 では、政府は具体的にどんな政策を展開したのでしょうか。例えば、2017年6月には<農薬管理条例>を施行、また、同年9月には、中国の農産物品質安全合格率が97.8%に達している事実を踏まえ、<農業供給側構造改革をより早く推進し、食糧産業経済を大いに発展させることに関する意見>を発して、グリーンで良質の食糧供給を増やす姿勢を示し、さらなる高みを目指す意欲を示しました。
 同年の2017年2月に公表された<第13次5ヵ年計画食品安全構想と薬品安全構想>は、上記の取り組みをベースに、2020年までの長期構想を提示したもので、いくつかの具体的項目が明示されました。それは次回に。

次回は10月5日更新予定 テーマは<>です。

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