企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第1090回 高まる食の安全意識-その3-

(2023年10月12日)

 ここまで政府の方策を詳しく見てきましたが、実際にはどんな問題があるのでしょうか。例えば農産物ですが、グリーン化・有機化・無公害化と表示する農産物はスーパーに並んでいても、消費者にとって自分が欲しいものを見つけるのは容易ではありません。値段が若干高いのは当然としても、広告費や包装代に金をかけて異常な高額だったり、また、本当に品質に偽りがないかも問題ですし、そもそもグリーン・有機・無公害などの概念も複雑で、消費者には違いが良くわかりません。一方、2017年ごろからトレサビリティの確立も推進されましたが、生産者側も、これらの基準に合致した農産物を生産するには様々な技術の習得が必要で、農薬や化学肥料の問題、土壌の測定などクリアしなければならない問題が多く、経費に見合った収入が保証されるのか、不安の種が尽きません。
 消費者から糾弾されているいくつかの問題を紹介しましょう。①遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物が混入して売られている。②ネット販売の宅配料理は粗悪な材料で調理したものが少なくない(2019年には18万戸摘発)。③食料品の内容表示がいい加減で、中には「内容は秘密」と表示した食品もある。④スーパーなどで生鮮食料品に赤色灯を当て、見た目をごまかしているなどで、農村では相変わらず偽ブランド食品が出回っています。
 こうした状況下で、政府は食品に関する様々な情報を流しつつ、取り締まりを強化しています。古くは2016年に中国食品科学技術会議が、「種なしブドウは避妊薬で栽培している」「ビタミンAは子供の大脳を破壊する」など食品安全領域10大フェイクニュースを発表しましたし、2020年には政府が15件の典型的な法執行事案を紹介、2021年は公安が農薬の残留、保険食品の違法添加、肉製品に粗悪品混入など食品安全事案1万1000件を摘発、1万3000人を逮捕しました。
 政府のこうした動きに対し、民間でも対応した動きが始まっています。ケータリング業界は早くも2017年に、<グリーン・ケータリング産業公約(緑色十条)>を発表、グリーン食材、従業員の衛生、環境にやさしい食器類など「グリーン・ケータリング宣言ブランド」を表彰する方針を打ち出しました。中国肉類協会も2015年から安全信用システム建設に励んでおり、2022年には22社がモデル企業として公表されています。

次回は10月19日更新予定 テーマは<>です。

バックナンバー一覧はこちら

三瀦先生のコラム