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第1094回 知財権戦略この3年-その1-

(2023年11月9日)

 2020年6月の本欄第922-923回で知財権について書いてから3年以上がたちました。第14次5ヵ年計画に突入して、中国の知財権の現状はどうなっているのでしょうか
 2021年9月、国務院は<知財権強国建設綱要(2021-2035)>という長期計画を発表しました。その趣旨は、中国独自のハイレベルな知財権強国の建設は、国のコアコンピタンスを高め、ハイレベルな対外開放を拡大し、より良い発展を成し遂げ、人々を満足させる上で重要な意義があると定義し、2035年には知財権総合競争力を世界の一流レベルに押し上げるため、以下の6つの面を重点任務としました。
 ①社会主義現代化に目を向けた知財権制度を確立する。②世界一流のビジネス環境を支える知財権保護制度を確立する。③革新的発展を奨励する知財権市場の運営システムを確立する。④民衆に資する知財権公共サービスシステムを構築する。⑤知財権の質の高い発展を促進する文化的社会環境を整備する。⑥グローバルな知財権ガバナンスに参画する
 その後、世界知的所有権機関(WIPO)が発表した<グローバルイノベーション指数2021>で、中国は上位30位以内唯一の中進国として、前年の14位から12位にランクアップしました。OPPOの特許申請数が6.1万件、世界での特許取得数が2.6万件に達したことはその象徴的な例で、しかも、その内89%は発明特許で占められています。
 こうした動きにつれて裁判所も難題に直面しています。2021年10月の全人代常務委員会第31回会議で周強最高人民法院院長が行った報告によると、近年、裁判所が受理する知財権関係の案件は年25%近い増加率を示しており、2020年には46.7万件に達しましたが、一方でネット・遺伝子・情報通信・半導体・人工知能・プラットフォーム経済など、対応が難しい最先端分野の案件が増加しているとのこと。知財権は利益関係が複雑で、社会の公共的利益と個人の権利の保護とのバランスをどうとるのか、複眼的な対応が迫られます。
 同月、国務院は<第14次5ヵ年計画国家知財権保護と運用計画>を発表しました。盛り込まれた5つの重点任務は、①司法保護・行政保護・共同保護・源泉保護など知財権法律政策体系の整備 ②知財権産業化システムの整備 ③民衆への還元と公共サービスへの貢献④知財権面に関する国際協力の強化 ⑤知財権人材と文化産業のベースづくりで、さらに、商業秘密保護など15のプロジェクトが設置されました。

次回は11月9日更新予定 テーマは<>です。

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