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第1095回 知財権戦略この3年-その2-

(2023年11月16日)

 次々に発表される長期的総合発展計画につれて、各方面でも歩調を合わせた整備が進んでいます。知財権情報公共サービス機構の整備は、各一級行政区や副省級都市などをほぼ網羅しており、その数は52カ所、地級市行政レベルでもその数は104カ所と、カバー率は三分の一に達しています。また、技術核心サポートセンターもすべての一級行政区を網羅して101カ所設けられています。こうした中、著作権登記の趨勢もようやく本格的になり、2021年は総登記数が前年比24.30%の626万4378件に達しています。作品著作権の内訳では美術作品が最も多く、第二は撮影作品、第三は文学作品となっています。中国では最近、ネット上での著作権侵害による被害が続出していて、中国版権協会が発表した<2021年中国ネット文学版権保護と発展報告>によれば、2021年12月現在、ネット上での海賊版ユーザーは1カ月で4371万人、ネット読者の14.1%を占め、一人当たりの使用回数は約50回に上っています。ネット文学サイトの多くで、毎年80%以上の作品が海賊版にやられ、82.6%のネット作家が著作権を侵害され、4割が度重なる被害に見舞われているのです。こういった状況を受け、2022年7月には、中国作家協会に中国ネット文芸知財権トラブル調停委員会が設けられ、中国作家協会は、全国重点ネット文学サイト連絡会議を開催、全国50前後の重点ネット文学サイトの責任者や省レベルネット文学組織責任者、及び著名なネット作家や評論家と<ネット文学産業モラル公約>を提唱しました。
 こうした様々な活動を支えるには、知財権に精通した優秀な人材の育成が欠かせません。国家知財権局によれば、2022年春の時点で、知財権関係の人材は69万人で、2025年には100万以上に増やすことが計画されています。そのため、国が定める経済関係職業呼称に知財権専門職を新たに加え、全国50余りの大学に知財権学部を設置しました。<知財権人材第14次5ヵ年計画プラン>による具体的な内容を見ると、「4+1」(知財権の保護・運用・公共サービス・国際化の4つの人材と審査登録の基礎的人材)が中心に置かれています。また、知財権教育は全国の小中学校にも積極的に取り入れられており、<全国小中学校知財権教育指南>が編纂され、2022年時点で、1400校、200万人以上が知財権教育を受けています。
 2023年上半期終了時点で、全国の知財権保護センターは60カ所に達し、知財権保護に対する満足度は既に80%を超えた、と政府は自負していますが、さらなる努力が必要でしょう。

三瀦先生のコラム