企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第1096回 鉱物資源に関する話題

(2023年11月30日)

 この12月1日、中国政府は黒鉛の輸出規制を始めました。黒鉛は単層の透光率が97.7%に達し、肉眼ではほぼ透明と言ってよいでしょう。さらに熱伝導率はダイヤモンドの2倍以上で、電気伝導も銅や銀を凌ぎ、さらに硬度は鋼鉄の約200倍、0.34ナノメートルの厚さでハンモックにしても、猫一匹を悠々支えられるというのですから、まさにファンタスティックな素材です。2017年には、スマホの充電やEVの充電に活用されるほか、酸化黒鉛の優れた浄水機能も立証されて、その重要性はとどまるところを知りません。日本は、EVに使われるリチウムイオン電池の材料として、9割を中国に頼っています。そのほとんどを中国に依存している企業日本企業もあり、対応に大わらわです。こういった、ハイテク分野など先端科学分野で不可欠なレアアースに関する規制は昨今強化されつつあり、今年は8月にも、半導体や太陽電池などに不可欠なガリウムやゲルマニウムの輸出規制が始まっていました。もちろん中国政府は特定の国や地域を対象とはしないと明言していますが、対中制裁を加えている国々が標的になりやすいことは言うまでもありません。
 2022年、中国のレアアース生産量は前年比25%増の21万トンとなり、世界の約7割を占めるに至りました。2位はアメリカの4万3千トン(約14%)、3位はオーストラリアの1万8千トン(同6%)、4位がミャンマーの1万2千トン(同4%)で、上位4カ国での9割以上を占めています。同年、中国のリチウム埋蔵量は前年比で57%増と大幅に増加しました。特筆すべきは、江西省の埋蔵量が青海省や四川省を超えて全国トップに躍り出たことで、前年比94.5%増、全体の40%を占めるに至りました。
 レアアースに限らず、中国は重要な鉱物資源の開発に力を注いでいます。早くは1990年代末から独自に探査衛星を打ち上げ、地上調査と並行して国内の地質探査を精力的に推進しました。青蔵高原をはじめ、東北地方の大興安嶺山脈など各地で探査が行われ、2006年ごろは、石炭、石油はもとより、鉄鉱、銅、ニッケル、ウラン、金など様々な鉱脈が全国各地で発見されました。また、陸地に限らず、2016年5月1日には「深海海底区域資源探査開発法」が施行され、南シナ海や太平洋、インド洋などの深海探査へ向けた行動にも拍車がかかっています。2021年新発見の各種鉱山は全国で95カ所、広大な中国の地下はまさに宝庫と言えましょう。

三瀦先生のコラム