企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第1101回 農村システムの問題-その3-

(2024年1月11日)

 まず第一に挙げられるのが、農業保険市場がきちんと整備されておらず、規範化に乏しく、収益構造も不十分なことでした。激甚災害復興に対する費用分担システムが曖昧且つ欠落し、地方財政に頼りきっている地域もありましたし、また、財政資金の使用基準もバラバラなうえに、行政が保険会社に干渉して不当に操作し、勝手に資金をため込んで、運用資金が不足することもありました。上述の指導意見はそれらの点に改善を加えたのです
 例えば、栽培業・養殖業・林業自体への保険以外に、農業生産設備保険や農民短期障害保険なども認め、今後に道を拓きました。また、全国農業生産リスク地図が作成され、地域別のリスクに応じた保険額の決定も実現しました。農業農村部・国家郷村振興局合同金融機構が2023年に発表した<社会資本の農業農村向け投資の手引き>は、農民の主体的地位の尊重、農民の根本的利益の保護、現代種苗業・農産品加工流通業・農村新型サービス業など13の重点領域に対する民間投資の奨励を堅持する旨を強調し、資金投入方式の刷新、協力用プラットフォームの構築、良好な投資環境の整備に関する具体的な措置を提示しました。また、同時に、2020年に全国16の一級行政区でテストされた産地冷蔵保鮮施設の建設をさらに拡大し、80億元を投入して全国展開することも決めました。
 短期融資の利便性改善も急ピッチで、中国人民銀行が行った2020年の分析では、全国の銀行ネットワークの郷鎮カバー率は97.13%に達し、農村地区の電子支払い普及率は急速に増え、零細企業への信用貸付も増加しました。
その一方で、地方銀行の中には経営リスクを抱えている中小銀行も多く、信用不安を起こさない対策も欠かせません。銀行保険監督管理委員会は2018年から2022年5月にかけ、リスクの高い農村の中小銀行627行の抱える様々な違法融資や違法手続きにメスを入れ、不良債権2兆6千億元を整理しました。こうした処置を通して吸収合併や再編を行っていく一方、289行には、1334億元の資本注入を行っています。
2022年、農業資材の高騰による生産意欲低下を阻止するため、政府は三回に分けて穀物農家に400億元の資金補助を行いました。また、2023年6月にも金融関係各部門は合同で<農村振興の全面的推進を金融面から支援し、農業強国建設を加速させることに関する指導意見>を発表し、9項目にわたる具体的要求を掲げています。

三瀦先生のコラム