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 第百十二回 東北地区開発


2003年8月、三度目の東北視察に出かけた温家宝首相は、長春で開催された東北老工業基地振興座談会で"西部加速、東北攻堅、東部保持。東西互動、帯動中部。"という方針を示しました。中国を西部、東部、東北部に分けて発展を構想するこの考えは、"三極論"とも呼ばれていますが、中国では温家宝首相のこの講話を、東部沿海地区の 発展、西部大開発に続く第三の大局として位置づけています。
温家宝首相が東北老工業基地の改革について打ち出した"四新(新思路、新体制、新機制、新方式)"という方針は、経済の低迷が続く東北地域各界に大きなインパクトとなりました。重厚長大型の国有企業が集中するこの地区は、所有制改革が遅れ、重化学工業に偏りすぎ、石炭、石油といった地下資源も枯渇が進み、遼寧省ではこの3年で 30以上の炭鉱が閉山して数十万人が職を失い、省全体では公式失業者数100万人、レイオフ150万人を数え、最低生活保障ライン以下の労働者は160万人に達していました。 温家宝首相がこのような方針を打ち出した理由は大別して3つあります。第一は、西部大開発、特に大西南の発展計画が軌道に乗り始めたこと。第二は、経済全体の改革が進み、最後の難関、東北の国有企業改革に取り組む次期が来たこと。第三に、これま での中国経済の発展が軽工業中心で、設備産業の発展が欠如していたため、大規模プロジェクトに外国の技術設備を必要とし、巨額の支払いを余儀なくさせられていることが挙げられます。
東北地区は、鉄鋼、造船、重機械、化学工業など設備工業を発展させる下地を十分に持っており、東北の振興が今後の中国の発展の鍵となったのです。
中国の地域発展は、既に省の範囲を越え、環渤海湾経済圏、長江三角州経済圏、大珠江三角州経済圏、南貴昆経済圏といった広域経済圏形成の時代に突入しています。東北地域は大連で環渤海湾経済圏とリンクするとともに、ロシア、韓国、日本との緊密な経済関係の構築が可能で、また、長江三角州経済圏などに対する穀物や有機農産物 の供給地としても有利な地位を占めています。ただ、今後、開発を積極的に推進するためには資金面での支援体制が不可欠で、そのためにも、他地域に比べ遅れが目立つ金融システムの改革整備、特に銀行の旧態依然とした経営体質の改善が急務と言えましょう。

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