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第1123回 中国の言語文字政策

(2024年6月13日)

  漢語ピンイン方案が第一期全人代第5回会議で承認されたのは1958年のこと。今では小学校の授業やパソコンのキーボードにも使われています。その3年前、1955年10月に全国文字改革委員会と現代漢語規範問題学術会議が民族共通語を「普通話」と正式に命名し、翌年には、国務院から<普通話普及に関する指示>が出されました。
 ピンインを含めた「普通話」の普及と<簡体字>の普及は、新中国建設以来の言語政策の二台支柱で、1998年、「普通話」の普及を徹底すべく、第一回全国普通話普及宣伝ウイークが開催され、さらに2001年には<国家通用言語文字法>も公布されましたが、相当の成果を収めた反面、規範的に使用されているかなど、様々な問題が依然として残っていました。とはいえ、普通話の普及率は2000年の53%が2015年には73%に上昇、識字人口の文字使用の正確度も95%に、ピンイン習得率も68%に達しました。
 2016年、国務院は<普通話普及に関する指示>60周年、<国家通用言語文字法>15周年に当たり、<国家言語文字事業“十三五”発展計画>を発表、①農村地域・民族地域での普及 と学校教育の強化 ②言語文字の情報化と言語データベースの確立及び情報化プラットフォームの建設、技術革新の推進 ③香港・マカオ・台湾などとの言語文化交流の促進 ④言語文字に対する法的なガバナンスの強化 といった任務を掲げました。こうした努力の結果、2020年代には普及率が80%を超え、さらに、学校教育での新たな試みも始まり、2022年には<小中学生普通話等級テスト標準・測定大綱>(試行)と<漢字部首表>が出され、小学校では6レベルに分ける方針が示されました。また<国家のハイレベルな普及政策に対する高等教育による支援強化に関する意見>も打ち出され、北京大学など122カ所が普及基地に指定され、翌2023年には<普通話等級測定規定>12章43条により、コンピュータ測定による情報管理システムが完成、公平が担保されるようになりました。
 中国は多民族国家です。56の民族が100種余りの言語を操り、29種類の文字を有し、さらに漢語の中にも北方方言・呉方言・贛(かん)方言・湘(しょう)方言・閩(びん)方言・粵(えつ)方言・客家(はっか)語など様々な方言があります。普通話普及の一方、これらの方言を保護する政策も各地で打ち出され、15の少数民族に対する文字方案の創造・改良を行い、100種余りの言語に対する言語文字規範も制定公布しています。

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