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第1126回 文旅-その2-

(2024年7月4日)

  2023年夏、全国の“文旅”市場は回復基調が明らかになり、その形式も“研学游”“亲子游”“夜游”など、様々な形態を見せ始め、娯楽的なイベントを除いた、各地域の文化を紹介する催し物なども前年同期比で301.53%増加しました
 例えば、魯迅のふるさとで、『社戯』に出てくる浙江省紹興市の安橋頭村では、水路に黒い屋根の烏蓬船が行き来し、村の祝福広場の“社戯”の舞台では越劇が演じられています。雲崗の石窟がある山西省大同市には雲崗博物館・雲崗美術館や皮影(影絵)演芸館などが建設され、長城国家文化公園の建設も進んでいます。
 また、同省南部は堯・舜・禹など中華文化発祥の地として有名ですが、中でも運城市は永楽宮を始め1600カ所余りの名勝古跡や102カ所の重点文物保護単位を持ち、地級市では全国一を誇り、まさに、“文旅”のメッカとも言え、精力的にリソースの開発が行われています。
 2022年11月に、中国茶の製茶技術がユネスコ非物質文化遺産に登録されましたが、それに絡み、浙江省盤安玉山古茶場では、2023年に、古代の服装に身を包んだ茶栽培農夫が芳しい茶を担いで声をかける、宋代茶市場の情景が再現されました。
 敦煌の莫高窟では、2023年秋、デジタル敦煌に浸る展示会が開幕し、3Dモデリング技術を用いて復元された莫高窟第285窟でVR体験をすることも可能になり、大変な人気となりました。このように様々な物質文化遺産や非物質(民俗)文化遺産が今、全国で総動員されているのです。
 2023年末の中央経済工作会議で、“文旅”はスマートハウス、スポーツイベント、国産トレンド商品と並んで、消費喚起の重要項目にランクインしました。今や、“文旅”は内需喚起の重要アイテムであり、人々の生活を支える拠り所とまで形容されています。こうした中、“文旅”に関し、新たな形態・モデル・提供方法が次々と生み出され、ショートビデオによる宣伝やVR体験も盛んになり、文旅部は<観光消費潜在力を解放し、観光業の質の高い発展を推進することに関する若干の措置>を打ち出し、全国的に“文旅”消費促進活動を推進し、新モデル都市群の発展を推進しています。ただ、こうした動きは、過去の例から見ても、ともすれば同工異曲に陥りやすく、各地域の固有な伝統文化を深堀りし、持続的で特色のある観光アイテムを開発しなければ、早晩、消費者に飽きられてしまうでしょう。

三瀦先生のコラム