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第1128回 大学入試の現状

(2024年7月25日)

 今年の中国の大学入学統一試験“高考”が終わりました。6月の7日~9日に行われた同試験の受験者数は、昨年の1291万人からさらに増えて1342万人と、年々増加の一途をたどっており、競争は益々熾烈を極めています。
 新中国で最初に“高考”が行われたのは、中華人民共和国建国後3年経った1952年のこと、しかし、その後、文革期間は試験中止に追い込まれ、1966年に毛沢東が死去し、いわゆる四人組が逮捕された翌年の1977年になってやっと再開されました。その後、90年代末の朱鎔基副首相の改革の余波を受けて生まれた多くのレイオフ者の就職を優先するため、高卒者に大学の門戸を広く開放、高卒者の社会への参入を遅らす政策がとられたのを機に、大学進学率は急上昇し、2001年には受験生の年齢制限も撤廃、その後も時代に合わせた様々な改革が毎年のように進められました。2012年に習近平政権が誕生すると、<入試制度改革を本格化させる意見>が国務院から発せられ、新たな改革を全面的に推進する号砲となりました。
 6月は入試の季節であると同時に、就職の季節でもありますが、うち続く経済の低迷は雇用にも大きく影響し、若者の失業率も20%を超え、一説には50%にも迫る勢いで、政府は失業の定義を改め、数値を抑制するなど必死になり、公務員志向も強まっています。こうした状況は、大学選びにも影を落とし、受験生やその親たちの間で重点大学に入って、就職を確保しようという意識がヒートアップし、あの手この手で目的を達成しようという風潮が空前の高まりを見せています。
 中国の大学入試で、大学側が地域別に定員を設けていることは夙に知られているところで、大都市と辺境地域などの比率は大学によっても大きく異なります。このため、地域によって合格ラインにかなりの差ができ、地方に籍を置いたほうが有利になるため、“高考移民”を図る話がひきも切りません。国内有名大学に進学する難しさを解決するため、海外に留学し、さらには現地国籍を取得して、外国人特別枠を利用しようという者、挙句に、日本で東大などに入るほうがよっぽど優しいと、日本の有名大学への進学を目指すもの者も急増してきました。某有名中学-高校では東大を目指す中国人子弟が年々増え、学年の一割にも達しているとのこと、こういった傾向は、今後ますます盛んになっていくものと推測されます。

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