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第1142回 科学技術研究成果の実用化-その1-

(2024年10月31日)

 科学技術研究の成果が産業とうまく結びついていない、という指摘は久しく行われていましたが、これを是正すべく、産学共同化、とりわけ軍民結合が強く叫ばれ始めたのは、2010年代中期でした。2015年、<科学技術成果転化法改訂に関する決定>が全人代を通過し、これを受け、国務院は“万衆創新”を旗印に、各研究開発機構・高等教育機関・企業や研究員に、研究成果の実用化により経済の質を高めるよう呼びかけ、全人代常務委員会も実用化に対する奨励や報酬に関する規定が順守されているか検査活動を始めました。こうして、高等教育機関の場合、実用化で得た利益はすべて学校側にリターンされ、しかもその50%以上は研究者に対するインセンティブに回せるようになりました。こうした中、軍民関係も「結合」という物理的な変化から「融合」という化学反応への進展が唱えられ、リソースの最適な配置や十分な利用が図られるようになりました。
 2016年以降、中国科学研究院は実用化基金や知財権運営管理センターの設置など、実用化支援に向けた様々な措置を打ち出し、同院の援助による民間企業の販売収入増加額は3797億元に達しました。さらに、2017年には国務院が<国家技術転移建設方案>を打ち出し、①システムの基盤を構築し、インタラクティブな技術移転ネットワーク形成を推進(統一された技術市場、全国的交易ネット、移転機構の建設と強化など) ②技術移転の道幅を広げ、輻射・拡散機能を強化(成果の地域を超えた移転・拡散など) ③保障システム運営の高効率化(正確な評価システムや報酬保証制度の構築、政策的支援など)という三方面の重点任務を提起しました。こうした方針は同年の十九全大会報告にも盛り込まれました。
 この動きは各地方にも広がりましたが、2019年11月、北京市はさらに踏み込んだ条例を制定しました。同月27日、北京市人民代表大会常務委員会は、<北京市科学技術転化促進条例>を承認しました。これは全国に先駆けてより具体的かつ詳細な規定を設け、北京を、世界的影響力を持つイノベーションセンターにしようというものです。それによると、政府が設立した研究機関や高等教育機関は、合法的に獲得した職務上の研究成果に関する知財権や、知財権未確立の成果に関する使用・譲渡・投資といった権利の全部あるいは一部を成果達成者に渡してよいなど、インセンティブをさらに強化しています。  
 続きは次回に。

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