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第1155回 中国小売業この10年―その1-

(2025年1月30日)

 ちょうど10年前の2015年7月13日の人民日報17面に<リアルショップに未来はあるのか>という全面を使った記事が掲載されました。そのまえがきでは「この2年間にリアルショップは大きなプレッシャーを受けた」として、北京の百盛百貨・華堂商場、上海淮海路の瑞興・美美・先施・OPA商場、広州の好又多の東山口店、新供銷百合等々各大都市で相次いだデパート、ショッピングセンター、チェーンスーパーの営業停止や撤退を紹介した後、商務部のデータで2014年に全国の関連商業形態の成長速度がいずれも落ち込んでおり、中でもデパートの落ち込みが顕著であることを紹介しました。


 同記事によると、中国の小売業の店舗数は2000年前後から倍々ゲームで増加しましたが、2010年ごろから変化を示し、2015年までの各年の販売額増加率は21%→12%→10.8%→5.1%→-0.1%と急速に鈍化していきました。この動きは、ECが2008年ごろに登場し、その後急速に発展したのと時期が重なっており、消費者はネットで検索してからリアルショップで実物を確かめて買うようになり、このころすでに、リアルショップはネットショップの「試着室」だ、という声が聞かれ始めました。それは数字にも表れており、2015年1~5月の統計では、ネットショップの前年同期比の伸び率が38.5%と、全国の主要な小売企業5,000社の伸び率を34ポイントも上回りました。


 同記事ではその原因を分析し、ECの影響は大きいものの、それのみではなく、消費者の消費性向が模倣型から個性化・多様化へ移りつつあって、小売りのルートが多元化していることにあるとしています。又、商品の質やアフターサービスへの要求も高まりつつあり、そうした動きについていけず、なおかつ賃金の倍増による人件費の負担増をそのまま製品に転嫁することが多かったことが挙げられます。これでは生き残れません。  

 
 このような観点から、リアルショップを「試着室」から脱却させる試みが急速に始まりました。ショッピングを人々の生活の総合的娯楽の一環に位置付け、リアルショップに様々な付加価値と多様性を加味し始めました。コスト削減のため、無人スーパーの試みも始まりました。こうして2017年春の全人代における政府工作報告には「リアルショップとネットショップの融合発展を推進する」という文言が書き入れられ、法改正など、新たな動きをサポートする体制の整備も叫ばれ始めました。

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