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第1157回 香港の没落―その1―
(2025年2月13日)
コロナが漸く明けた2022年7月1日、香港は返還25周年を迎えていました。そこに至る足取りを振り返ると、返還当初、香港は特別行政区として、その自治を広範囲に認められたかのようでしたが、その後、香港の民主派に対する統制は徐々に厳しさを増していき、それが2014年の「雨傘運動」に発展、これに対し、中国政府は「基本法は中国の法律であり、国家の観念が大前提にある」事を強調、同運動を圧殺する一方、行政長官の選挙を強行して、2017年3月26日に林月娥氏が香港特別行政区第5代行政長官に当選しました。さらに2019年2月に国務院が公布した<粵港澳大湾区発展プラン綱要>(グレーターベイエリア構想)は「一国二制度事業の発展を推進する新しい実践」と位置付けられ、香港は「祖国の内懐にソフトランディング」させられました。2021年12月21日の人民日報は第10面から第12面まで2ページ半にわたって「一国二制度下における香港の民主的な発展」と題する膨大な報告(国務院新聞弁公室)を発表しましたが、それを読むと、政府側の意図と見解がはっきりとみて取れます。こうして対香港政策は新たな段階を迎え、本土との一体化が積極的に推進されるようになりました。2023年1月、国務院は<内地と香港・マカオの人員往来を活発化させる措置に関する通知>を出し、1月8日から実施するとしました。これはコロナ期間の統制解除という側面が色濃いものですが、ともかくも空路・陸路・水路の往来の回復・拡大、香港に対する内地住民の観光やビジネス出張が可能になりました。
しかし、こうした中、以前とは異なる新たな動きも垣間見られるようになりました。本土から香港に向かう人に比べ、香港から本土に向かう人の数が3倍にも増加したのです。「北上消費」と呼ばれる現象です。原因は、中国政府の厳しい統制によって、多くの香港市民が香港を脱出、香港独自の文化が色あせ、広東語より北京語を話す人の数が増え、一方で、隣接する深圳などの発展が香港に追いつき、追い越す勢いになっていることです。実はこの傾向こそが共産党政府が当初から目論んでいた中国式「和平的演変」そのものであるとも言えましょう。2024年3月に香港特別立法会で採択された<国家安全保護条例>が「香港にとどめを刺した」との見方も出ています。今や深圳はテック企業のメッカ、香港の優秀な若手エリートさえ深圳を目指して北上しているのが現状です。次回はこの続きを。