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第1158回 香港の没落―その2―
(2025年2月20日)
詳しく見てみましょう。2019年の激しい民主化デモは「香港に栄光あれ」をテーマソングに大きな反響を呼びましたが、2020年にはそれを無視して香港国家安全維持法が施行され、これに対する「白紙デモ」も制圧されました。2021年には小学校で愛国教育を必修化し、2023年からは高校生に本土の歴史や文化を学ぶ修学旅行を実施し始めました。2024年になると統制はより本格化し、1月にはカナダに在住する民主活動家周庭氏が指名手配となり、翌3月には上述の国家安全条例が追い打ちをかけ、4月15日「国家安全教育の日」には愛国教育の徹底が宣言され、その後、6月までに一国2制度を維持してきた英国籍・カナダ籍の裁判官が続々と辞任、本土並みの共産党による法の支配が実現していきました。この勢いを駆って、8月以降には、民主派のネットメディア「立場新聞」の編集長らと、政権転覆を謀ったとして起訴されて無罪を主張した立法会元議員ら14人に有罪判決が出され、既に有罪を認めていたものも含め、11月には45人に禁固4年2カ月~10年の判決が下されて民主派は完全に息の根を止められてしまいました。こうした政治情勢によって香港の独自性は急速に色褪せていきました。人口面で見ると、2021年から2023年までに香港人約15万人が国安法の施行で香港を見限ってイギリス政府の特別ビザを使い同国に移住し、数千人がカナダやオーストラリアで永住権を取得しました。このため、人口は2019年の750万人から2022年には730万人にまで急減し、この中には高度な人材が多数含まれていました。香港中文大学による2023年の調査では、住民の37.7%が国外への移住を希望したとのこと。これに対し、中国政府は2022年末から、世界の高度な人材を誘致するビザ制度(年収2500万香港ドル、または世界トップ100の大学の卒業生)を立ち上げ、2024年夏時点で7万人がビザを獲得、しかし、その内95%が中国本土からの応募者だったのです。同年10月、李家超行政長官はこれまでの措置に加え、本土の大学生向けビザの基準を緩和し、2046年までに全体として100万人を本土からうけいれる方針を示唆しました。香港に継続して7年居住すれば永住権と香港パスポートを取得できるのですから、海外への移民もしやすくなる可能性は否定できず、恒久的な定住者になるか、皮算用の行方が注目されます。
人口の入れ替わりが急速に進む香港、実際にどんな変化が起こっているのかは次回に