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第1162回 自由貿易区の更なる発展―その1―
(2025年3月20日)
2013年、上海に「中国(上海)自由貿易試験区」が設立されたのを自由貿易試験区発展の第一段階とすれば、2015年3月に中共中央政治局が<広東、天津、福建自由貿易試験区全体プラン>と<上海自由貿易試験区改革開放をさらに深化させるプラン>を承認したのはその第二段階に当たります。この時期、中国経済は“新常態”(ニューノーマル)と自らネーミングした調整期に突入し、さらなる発展のために、投資管理制度の確立、貿易の一層の利便化、資本取引と金融サービスの開放、関連する政府の職能の転換による市場化などを促進する思いきった措置が必要とされていたのです。そして、上海自由貿易試験区による1年半の経験を活かし、全国にそれを展開する手始めとして、広東・天津・福建でその試みが開始されました。ではその後の展開はどうなったのでしょうか。2017年にアメリカでトランプ政権が誕生し、中国に対する経済制裁が強まる中、中国は外資導入を一層促進するため、積極的な改革を進めました。2017年には<自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置(2017版)>が公布され、自由貿試験区を対外開放の絶好のエンジンとするため、ネガティブリストの大幅な縮小、外資系企業のM&Aに対する参入制限、投資可能領域の拡大、外資参入に対する基準の透明度の向上が図られました。
こうした動きを経て、自由貿易試験区は2017年末までに11区に達し、さらに、模範となる自由貿易試験区の成果が2018年5月までに153項目に達し、全国に一層普及させる雛形となりました。ネガティブリストも、2013年の190項目から、2018年には45項目に減っていたのです。
自由貿易区の発展は、中国にとって西部第開発、東北の振興、京津冀の協力的発展、東部地区の先駆的発展、中部地域の台頭、長江経済ベルトの発展、一帯一路という戦略といった中国地域発展の骨格をなす巨大プロジェクトの革新的作用を果たすようになってきつつありました。例えば、2019年8月、国務院は<中国(山東)(江蘇)(広西)(河北)(雲南)(黒竜江)自由貿易試験区全体プラン>を公表しましたが、山東省は海洋経済の中心地、江蘇省はイノベーションとモデルチェンジのモデル地区、広西チワン族自治区はASEANへの窓口、海のシルクロードの玄関口、河北省はグローバルな物流センター、イノベーション基地、雲南省は長江経済ベルトと海のシルクロードの連結点、黒竜江省はロシアと東北地区の結節点とそれぞれに重要な役割を担うことが期待されたのです。この続きは次回に。