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第1192回 中国知財権戦略、この2年―その2-

(2025年10月23日)

  2024年以来、人民日報には知財権に関する記事が次々と掲載されましたが、その中で、主な記事を4本選んでご紹介しましょう。2024年5月21日掲載の<知財権保護は革新的発展の擁護者>(林毅夫北京大学新構造経済学研究院副院長、第14次全国政治協商会議常務委員会・経済委員会副主任執筆)では、『新構造経済学の視点から見た中国知財権戦略』(唐恒、王勇、趙秋運共著)北京大学出版社を紹介していますが、その中で、産業の「世界の先端技術との距離」、「比較的優位にあるかどうか」、「研究開発サイクルの長さ」という三つの基準で中国の現有産業を五つに分類しています。すなわち、[①後追い型-従来型の装備製造業 ②先導型-家電・造船・高速鉄道・モバイル端末など ③転身型-優位を占めた産業が、資本の蓄積あるいは賃金の上昇で、スマイル曲線の両端、あるいは労賃の安い地方へ移転-労働集約型の加工産業 ④新技術援用追い越し型-研究開発サイクルが短い、ビッグデータやAIなど第4次産業革命に関わる多くの産業 ⑤戦略型産業-研究開発サイクルは長いが、挙国体制で自主的に発展させるべき、国防と経済安全保障にかかわる産業]です。同書はこれらの異なる産業群を新構造経済学によって結合させるのに必要な、各産業の特性に合った知財権戦略を模索しており、中国の産業が比較的優位性から、競争的優位性へ転換するために不可欠な知財権強国実現の道筋を探っている、と述べています。


  2024年8月12日掲載の<知識を資産に、特許をボーナスに>(谷業凱署名)は、工業用ロボットなどを生産する某中小企業が、企業と大学の科学技術協力をスタートさせ、大連大学の持つ特許を使ってシステムの性能を大幅に向上させ、半年で、企業の経済価値が1000万元ほど上昇した例を紹介し、従来、多くの企業とりわけ中小企業が、大学や研究所の持つ膨大な特許を利用するルートを見つけにくく、科学研究成果と実用化のアンバランスを招いており、その改善が急務である、と提唱しています。国の方針に則り、2023年以来同時点までに、3200人余りの特許権所有者が5.9万件の特許を試験的に開放し、中小企業11万社に提示し、1.7万件が使用を許可されたことは、両者のタイアップ促進という面で非常に大きな意味を持っていると言えましょう。次回もこの続きを。


   

 
 

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