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 第百二十四回 農村選挙事情‐"両推一選" "交叉任職"

農村部での主な選挙には、共産党支部選挙、村民委員会選挙、人民代表大会委員選挙などが挙げられますが、それらの選出方法改革の中で、最近広がりを見せている"両 推一選" "交叉任職"についてご紹介しましょう。
"両推一選"とは、党支部選挙の場合、大衆の推薦と党員の推薦による得票結果により候補者をノミネ−トし、組織の審査を経て正式に候補者として認定した後、党員代表 大会で党委員会書記と委員に選出するものです。郷や鎮の党委員会に直接指名された 者が党員代表大会で承認されるという従来のやり方と比べると、「組織の審査」の審査内容が気にはなるものの、一応、間接選挙が直接選挙という形になり、信任選挙("定額選挙")が選抜選挙(落選者が出る"差額選挙")になったという大きな違いが 有ります。 "交叉任職"(兼職)とは、党支部のメンバ−に村民委員会選挙への立候補を極力勧 めることです。その背景には農村における"両委"(党支部と村民委員会)の不協和音と、両者の幹部の合計数が多すぎ、農村財政を圧迫しているという現実があります。 そこで、同一人物が両者の機能を兼ねることで、対立を解消し、効率化も進めよう、というものです。
ただ、この方法は、共産党の組織強化と直接的に結びつくものであり、非党員村民委 員会委員に入党を進める方法も採られていることから、運用を間違えれば、共産党員 でなければ村民委員会のメンバ−になれない、という誤った風潮を生む危険性も孕んでいます。
"海選"("海推直選"の略)と呼ばれる住民による直接選挙の実施や、最近よく耳にす る住民投票による村の幹部の罷免などは、中国農村の民主化が黎明期にさしかかって いることを示す証左と言えましょう。しかし、その一方で、候補者が当選の暁には村 民全員にお金を配る公約をし、候補者間の値上げ合戦の結果、遂には一人2000元、総 額223.62万元の金が動いて問題になった山西省河津村の例や、地位を利用して大量の投票用紙を手に入れたり、偽投票用紙が横行したり、はては賄賂、脅迫など、選挙がらみの不正のすさまじさも相当なもので、早急な是正が必要です。農村の選挙について、現時点では、1998年の<村民委員会組織法>の中に簡単な規定があるだけですので、何よりも本格的な<村民委員会選挙法>の制定が待ち望まれています。

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