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 第214回 高等教育の変貌

(2006年1月23日執筆)

大学進学率が3%くらいだったのは過去の話。最近は20%近くにもなり、2008〜2009年の当該年齢人口のピークに向け、募集枠も今後年々8%前後増大していくと予測されています。大学の大衆化が進み、高等職業教育の充実が叫ばれる一方、大学本科の教員の質と教育の中身も大きな問題になってきました。
一例を挙げると、吉林大学では、2004年末に、それまでの昇格はあっても降格はない職階制度を打破し、研究・教育内容が基準に達していない教員は降格、場合によっては解雇も有りうるという厳しい方針を打ち出し、2005年1月からこの改革をスタートさせました。その結果、全学の教員4187名のうち272名(186名の教授・助教授を含む)に降格から解雇までの厳しい措置が施される一方、6名の優秀な若手が教授・助教授に抜擢されました。
北京市でも注目すべき改革が行われました。北京市所属大学教員は、1987年から、市によって年一回職階評定が実施され、一度教授になったら降格はありえませんでした。これに対し、北京市教育委員会と市の人事局は2005年9月に<北京市所属大学教員職務招聘制実施意見(試行)>を通達し、契約による任期制を実施する、としました。これまでは能力より様々なバランスを考慮した人事になりがちで、しかも市が評定することで情実的介入の弊害が大きかったのです。今後は、大学内の専門委員会が教員の任用権を行使すると共に、最低7日間以上の公示を義務付けた公募制を実施することになりました。
山東省で進めている人事制度改革の要点は、行政と教育研究が未分化だった状態を改善し、行政と教育を分離させること。行政職には10級に分けた教育職員制を導入、大学の首脳陣など一部の特別職以外は、教授・助教授という名称を用いないことにすると同時に、一般教員は行政事務に煩わされず、教育研究に専念できるようにし、教授・助教授など教育職位の評価認定も各大学で独自に行えるようになりました。
これらの改革はいずれもが、大学の自主権を拡大して教員が教育と研究に専念できる環境を整える一方で、これまでの終身制的な身分制度に風穴を開けて能力主義を前面に打ち出すことで教員の研究と教育の質を高めよう、というものです。最近では研究重視・教育軽視に対する反省も聞かれる中国の大学教育、その中身の変化が注目されています。

三瀦先生のコラム