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 第216回 個人所得税法の改正

(2006年2月6日執筆)

2005年10月27日、『<中華人民共和国個人所得税法>改正に関する全人代常務委員会の決定』が第10期全人代第18回会議で採択されました。その主な内容は、

    1.賃金・給与所得の課税最低限を従来の800元から1600元に引き上げる(第6条)。
    2.個人所得者を納税義務者、所得を支給する組織或いは個人を源泉徴収者とする。源泉徴収者は、雇用者全員・給付額全額を申告する(第8条)。個人所得者の所得が国務院の規定を超過しているか、2箇所以上で賃金・給与所得がある或いは源泉徴収者がいないなどの場合は、納税義務者も申告する。

個人所得税の税収は2004年には1737.05億元に達し、国の項目別税収の第4位となりました。しかし、従来の規定や徴税方法が現状と乖離し、国民の貧富の格差を調整する重要な役割が機能せず、高額所得者からの徴収漏れなど多くの問題が指摘されました。また、1980年に800元が課税ラインになった時、該当者は賃金・給与所得者の1%前後でしたが、2002年には52%に達し、800元という数字も一般庶民の多くを直撃するものとなりました。そのため、地方によっては、勝手に手心を加えるなどの事例が続出しました。
2005年7月の全人代第17回会議で、まず課税最低限の1500元への引き上げが提案され、8月以降、この数字をめぐって「都会ではそれでも苦しい、もっとあげろ!」「地域格差が有りすぎるから、地域に調整権限を認めるべきだ」等の議論が繰り広げられました。9月には応募4982人から地域・職種・収入などを考慮して20人を選出した公聴会が開かれ、最終的に1600元への引き上げが決定されました。「現在の中国人一人当たり月平均支出1143元を457元上回り、かつ“四金”と呼ばれる基本養老保険金・医療保険金・失業保険金・住宅積立金等の控除を加えると2000元近くになる」とは政府側の説明。
12月19日、『<同法実施条例>改正に関する国務院の決定』が公布され、2006年1月1日から施行されることになり、年収12万元以上の者は、年度終了後3ヶ月以内に自ら申告する事が義務付けられました。その後、全国統一基準で行うことも確認されています。今後の最大の課題は、11種の徴税項目毎に課税基準・方法が異なることから発生する不公平を根本的に是正する為に、総合所得モデルへどう転換していくか、につきるでしょう。

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