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 第230回 社会主義栄辱観

(2006年5月22日)

2006年3月4日、胡錦濤総書記は、政治協商会議の委員たちを接見した際「広範な幹部大衆、特に青少年に社会主義栄辱観を確立させるよう導かなければならない」と強調し、祖国を熱愛する事を光栄とし、祖国に害をなす事を恥辱とする。
人民に奉仕する事を光栄とし、人民に背離する事を恥辱とする。
科学を尊重する事を光栄とし、愚昧無知である事を恥辱とする。
勤勉に労働する事を光栄とし、労働を軽んじる事を恥辱とする。
団結し助け合う事を光栄とし、利己的な自己中心を恥辱とする。
誠実な約束の履行を光栄とし、義に悖る儲け主義を恥辱とする。
法規を遵守する事を光栄とし、法規に違反する事を恥辱とする。
全力で努力する事を光栄とし、奢侈淫楽に耽る事を恥辱とする。

という<8つの光栄と8つの恥辱> を提唱しました。この新しいスローガンの提起は準備周到で、ほぼ同時に人民出版社の『社会主義栄辱観:八個為栄、八個為恥』宣伝画が全国の新華書店で一斉に発売され、党中央宣伝部は、公共のあらゆる場所での看板による宣伝と理論的文章・文学作品の発表を、党中央紀律検査委員会もこれに基づく党のモラル刷新を、解放軍総政治部も全軍と武装警察に学習を呼びかけました。
今回、このように社会全体を巻き込んだ、党・政府主導によるモラル運動が開始された背景には、経済発展が進む中、拝金主義・利己主義・享楽主義がはびこり、信義が地に落ち、幹部の腐敗堕落が蔓延している現実が有ります。2005年に全国で起こった庶民による様々な抗議行動はその直接的な反映であり、真摯に取り組まなければ、共産党の一党独裁の地位をも揺るがしかねません。勿論、党中央宣伝部が大々的に乗り出した裏には、このキャンペーンを利用して思想の引き締めを図る意図も垣間見られます。また、2008年の北京オリンピックに備えた社会のモラル向上という側面も見逃せません。
春秋時代の大宰相、斉の管仲の著『管子』に“衣食足則知栄辱”という有名な語句があります。視点を換えれば、経済発展が一定の段階に達し、これまでの“温飽”(衣食)問題の解決から次の段階にシフトしつつある現状を象徴する出来事とも言えましょう。

三瀦先生のコラム