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 第237回 中国の言論統制とその背景-その1-

(2006年7月18日)

2006年1月24日、中国の歴史教科書の不公正さを批判した中山大学の袁偉時教授の「現代化与歴史教科書」を掲載したことで中国青年報『氷点週刊』が停刊になりました。知識人や学生に絶大な人気を保っていた『氷点』停刊ニュースは、ネットなどを通して瞬く間に世界中を駆け巡りました。それをきっかけに、日本でも各紙が昨年来の様々な言論弾圧の実態、浙江省台州市で「台州晩報」の呉副編集長が警察を批判し暴行され死亡した事件・スクープで名を馳せた「新京報」の楊編集局長ら幹部3人の更迭事件・広東省副省長の行政処分関連記事で副編集長が解任された「南方都市報」事件・中国政府のホームページの英語の誤りを指摘して解任された「公益時報」陳傑人氏の事件などを紹介しました。
『氷点週刊』はその後1ヶ月という異例の速さで復刊になりましたが、編集主幹の李大同氏は左遷されたままで、その間の様々な経緯は李大同氏自身の手で明らかにされ、日本において「『氷点』停刊の舞台裏」(僑報社)として6月末に刊行されました。当コラムは中国共産党機関紙「人民日報」の定点観測を趣旨としていますが、では「人民日報」はこの事件をどう報道したのでしょうか。実は『氷点』の『氷』の字も見当たりません。それもそのはず、李大同氏が書いているように、この事件について党宣伝部は緘口令を敷いていたのです。したがって直接的な関連記事は一切掲載されませんでした。
中国政府は一体、メディアの役割をどう捉えているのでしょうか。ここにそれを明白に述べた文章が有ります。2005年1月18日に人民日報が大きく掲載した「湖北日報」の畢志倫会長の<メディアに対する指導能力は党の重要執政能力である>という一文です。
この中で畢氏は、「メディアに対する党の指導能力を高め、世論を正しくリードすることは、党の執政能力を強化する上での重要な課題」とし、「イデオロギーの領域は従来から敵対勢力とわが党が激しい争奪を演じている重要な陣地」であり、「わが国の新聞・ラジオ・テレビ等のメディアは党・政府・人民の舌」として「いかなる状況の下でも所謂“第4の権力”ではない」と断じ、「メディアに対する党の絶対的指導」を主張しています。このような考えは2006年1月、共産党がメディアに対し党と人民の代弁者になるよう求めた文書にも反映されています。こういった最近の動きにはどういった背景が考えられるのでしょうか。

三瀦先生のコラム