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 第250回 銀行の動向

(2006年10月23日)

2006年10月27日、中国工商銀行が香港・上海の株式市場に同時に上場しますが、その新規調達額は約2兆3千億円で世界最大とのこと。中国4大商業銀行で最初に上場したのは中国建設銀行で、次いでさる6月1日に中国銀行が香港株式市場に上場、1兆3千億円の資金を調達しましたが、今回はそれを更に上回ったわけです。
中国はWTO加盟時に約束した銀行業の対外開放措置として、2006年12月には人民元取り扱い業務を外資系銀行にも全面開放しなければなりません。そのため、銀行の経営の改善と組織の近代化が急務になっていて、中国政府は各銀行に2007年1月1日までに自己資本比率8%をクリアするよう求めています。ちなみに2005年末に同基準をクリアしたのは都市商業銀行で36社(年初の倍)、不良債権比率も主要商業銀行が年末には8.9%と初めて一桁にまで減少しました。ただ、不良債権比率が減少したといっても、実は貸出額が大幅に増加しているため相対的に比率が低下したとも言え、いわゆる“双下降”(残高と比率の下降)がはっきり実現しないと内容が好転したとは言えません。
2006年3月現在、中国の国有銀行・株式制商業銀行・都市商業銀行の資産総額は20.80兆元・6.07兆元・2.09兆元と国有銀行が圧倒的ですが、前年同期比の伸び率は17.4%・26.9%・25.3%と国有銀行の伸び悩みが鮮明です。この状況を打開するには外銀の出資を促し、経営のノウハウを吸収すべしという動きが2005年からあり、同年10月時点ですでに16行が外資を導入しました。建設銀行に出資したバンク・オブ・アメリカはその典型的な例です。中国銀行業監督管理委員会が2006年4月16日に<国有商業銀行企業統治及び関係監督管理の手引き>を公布、国有商業銀行が戦略投資者を受け入れる際の5項目の基準を示したのもこの動きに沿ったものです。
この他、3つの政策銀行(国家開発銀行・中国輸出入銀行・農業発展銀行)のモデルチェンジや郵政貯蓄銀行の設立などの新しい動きも見られますが、農業銀行の乱脈ぶりに見られるような風紀の紊乱、特に末端の支店の無法振りを正すことも急務。2006年、中国建設銀行が中国国内の銀行としては初めて、首席財務官と首席危機管理官を置き、企業統治に積極的に取り組む姿勢を見せましたが、この動きがどう伝播していくか注目されます。

三瀦先生のコラム