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 第二十七回  戸籍

1958年に制定された<中華人民共和国戸口登記条例>は、都市戸籍、農村戸籍を区別し、また、食糧の配給、住宅、雇用制度などと密接に結びついて、戸籍を離れれば生存さえ困難になりかねないほど、厳しく人々の行動の自由を束縛してきました。
改革開放が始まり市場経済化が進む中で、食糧切符などによる配給制度も消滅に向かいました。一方、大都市の発展に大量の労働力が求められ、農村の余剰労働力が沿海地方に怒涛のように流入するにつれ、従来の戸籍制度との矛盾がますます顕在化しました。
1992年、国務院に戸籍制度改革文件起草小組が設けられ、早くも広東省で農村人口の小都市への移動条件が緩和されました。その後、96年には上海の浦東新区で、特別な条件を満たすものに限り“藍印戸口”(一般市民の戸籍には赤であるのに対し、青の印が押された)が認められましたが、80年代後半に起こった“盲流現象”の教訓から、小都市の建設による農村の余剰労働力の吸収が最も重視され、97年には各地に戸籍移動のモデルケ−スとして382ヶ所の小都市が指定され、2年間で50万人以上が手続きを済ませました。
昨年3月、国務院は各地に、10月1日までに小都市戸籍改革を全面的に推進するよう通達を出しました。一方、5月1日からは戸籍の移動の際に食糧と食用油に関する手続きをしなくて済むようになりました。いよいよ、本格的な戸籍改革がスタ−トしたのです。
8月になると、安徽省、江西省、済南、ウルムチ、10月にはハルピン、11月には北京などで次々に戸籍制度の改革が打ち出されました。ただ、戸籍取得には学歴、投資額、住宅購入、特殊技能、在住期間、血縁関係など多かれ少なかれ様々な条件が設けられ、北京のように相当なレベルに達した私企業の経営者に的を絞った地域さえ有ります。
12月に福建省が、今年1月には湖南省が、農業戸籍、非農業戸籍の区別を廃止し、住民戸籍に統一する方針を打ち出しました。出稼ぎ労働者の待遇改善も、様々な費用の徴収の廃止、医療保証、養老保険、子供の教育、人民代表大会の被選挙権の賦与など、急ピッチ。
WTO加盟による農業の再編で生じるであろう大量の余剰人口は2005年には1億3千万人の流動人口を生むといわれています。戸籍制度の改革と小都市による農村人口の吸収は、まさに第10次5ヶ年計画の成否を左右する大改革といえましょう。

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