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 第368回山寨文化と知的財産権

(2009年3月16日)

2008年末、“山寨”という語がたびたび目に留まるようになりました。“山寨手機”に始まり、“山寨鳥巣” “山寨版春晩” “山寨版百家論壇”など、あっという間に広がり、これらを総称して“山寨文化”という言葉も聴かれるようになり、その是非を巡って論争も活発になりました。
“山寨”は元々広東語から来たもので、“山寨文化”とは、ブランドモノの高級機器の模造品製作といった知的財産権侵害に当たる模倣品の製作や海賊版的なものから、パロディ的な物まねやしゃれのめしまでかなり幅広い意味で使われ、前者は当然違法性という観点から、これを戒める論調も多く見られますが、後者となると、これもある種の文化的更には創造的行為であろう、と言う意見も根強く、論議を呼んでいるわけです。
前者について、現在、中国国内の携帯のなんと30%が“山寨手機”であるという統計もあり、これを見逃すわけには行かないのは当然と言えましょう。2005年に海外からの強い抗議を受け、政府は当時の呉儀副首相を組長に国家知的財産権保護対策班を設置して中国の知的財産権戦略を策定し、その後、一歩一歩知的財産権保護の足取りを進めてきました。実際、パソコンなど様々なソフトの海賊版率は2005年が26%、2006年24%、2007年20%と徐々に下がってきてはいますが、それでも5本に1本は海賊版ということになります。
2008年6月5日、<国家知識産権戦略>が頒布され、2020年の完成を目指した、国としての知識財産権戦略が明示されました。今後イノベーション型国家を建設し、国際競争力を高めよう、という中国の意思がはっきり示された、とも言えましょう。2008年7月、広東省では1150万元を拠出して優れた特許を生み出した20の機関・団体を表彰しました。同省は累計特許認可数が30万件に達し、13年連続全国一を占めていますが、上記の<綱要>では、こういった特許を守るべく、裁判所に対し、取り締まりの強化を強く求めています。
12月27日、特許の範囲の拡大や管理部門の権限強化など、修正された<中華人民共和国特許法>が全人代常務委員会を通過しましたが、こういった動きと平行する時期に“山寨文化”が出現して勢いを得る事が、単なる偶然か関連した動きか、は即断できません。いずれにせよ、この2つの流れは、中国社会が一つの転換期を迎えつつある兆候とも言えましょう。

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