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 第389回経済危機をバネに—鉄鋼業界

(2009年8月24日)

2009年8月13日、李毅中工業・情報化部長は、「どんな経営状態のいい製鉄会社でも、今後3年間は新規プロジェクトに応じない」と発表しました。現有鉄鋼生産能力6億6千万トンに対し市場のニーズは4億7千万トンで、1億9千万トンの生産過剰、加えて、現在5800万トン分のプロジェクトが建設中とあれば、強力な引き締めも当然と言えます。
世界鉄鋼協会の公式統計によれば、2008年の世界の粗鋼生産量は13億2970億トン(1.2%減)と、1998年以来はじめて前年比を下回りました。世界同時不況で自動車・住宅・造船など大口消費先産業が軒並み不振に陥ったからです。同時に粗鋼生産量5億トン(世界の38%、13年連続世界トップ)だった中国製鉄業はもろにその波をかぶってしまい、国内市場の鋼材総合価格指数は2008年8月以降急落、10月末には中規模以上の製鉄会社71社中42社が赤字に転落し、高価格の鉄鉱石の在庫2億トンを抱え、輸出も激減しました。
とはいえ、農村の近代化・都市化を進め、工業化を図る中国にとって、製鉄業は命綱でもあります。この危機を乗り切るため、政府は2009年3月に<鉄鋼産業調整と振興プラン>を発表し、本格的な対策に乗り出しました。その主要項目の一つが業界再編です。
中国には現段階で1000社もの製鉄会社がひしめいています。1社あたりの平均規模は100万トンを下回り、上位5社のシェアは28.5%に過ぎません。欧米や日本が上位4社だけで60%を越えているのに比べれば、その乱立振りは歴然としています。
この状況をどう再編に導くのか、主として建築用鋼材を生産している小規模製鉄所は、内需拡大による住宅産業復活が進めば、おのずと息を吹き返します。しかも、その製品は必ずしも劣悪とは限りません。ただ一方で、環境汚染面では大きな問題を抱えています。これらの企業の一定の淘汰は必要であっても、強制的に淘汰するには、従業員の再就職問題や産業分野の転換には政府の強力な後押しが必要になります。
2008年6月、唐山鉄鋼と邯鄲鉄鋼が合併して河北鉄鋼集団が成立したのに続き、2009年3月には宝鋼集団が杭州鉄鋼集団の株式56.15%を20億2140万元で買い取る協定が結ばれました。これによって生産コストを引き下げ、新技術の開発を進め、更に海外資源獲得における価格交渉で有利な立場を形成することが期待されています。

三瀦先生のコラム