企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

LastUpdate:

 第441回労働者の給与−その1−広がる給与格差の問題

(2010年10月05日)

2010年3月の全人代政府活動報告のなかで、温家宝首相は「収入格差拡大の趨勢を断固転換させる」と強調しました。全国総工会が最近行った調査では、75.2%の労働者が「現在の収入分配構造は非常に不公平である」と認識しており、61%が「一般労働者の収入は低すぎる」と感じています。第一次産業や労働集約型第二次産業中心からの構造転換が過渡期の段階にあることも大きな原因の一つではありますが、原因は他にもあります。
その一つとして指摘されているのが、労働報酬の伸びが経済全体の成長速度や政府の収入・企業の資本収益の伸びをはるかに下回っていることで、過去5年間で給与が増えなかった労働者は全体の23.4%にも達しています。企業で言えば、企業の利潤が労働者の給与を侵食しているのです。その一方で、医療・教育・住宅・老人の扶養などにかかる費用は、社会保障の整備が不十分であることから、大きな負担となって家計にのしかかってきます。それらに対する企業からの手当ても、給与内に算入されてしまう事が珍しくありません。
また、国有独占企業勤務者の高額な報酬も不公平感を醸成する要素の一つになっています。正当な労働の対価としての高給ではなく、独占と言う立場を利用してのあからさまなお手盛りに対する反発です。多くが企業内留保に回ってしまうこれらの利潤を政府がもっと吸収して社会保障のサポートに回せば、労働者の家計の負担が軽くなり、その分、消費が盛んになって経済発展にも寄与するのではないか、と言う意見もあります。経済発展を支える3つの要素、輸出・投資・消費のなかで、輸出や投資が発展を主導している中国経済の現状はどう見ても正常な発展モデルとは言い難いものです。
不公平感を醸し出すもう一つの原因が税制の不備でしょう。収入の課税最低限度額は2度の調整を経て、800元から2000元に引き上げられています。それに連れて納税者比率も60%から30%以下に下降しており、今後は累進化税率の引き上げが大きなポイントになるでしょう。また、税制で把握されにくい“灰色収入”(様々な手当て、現物支給など)や“隠れた収入”のあぶり出しを求める声も高まっています。いずれにせよ政府が先頭に立って、合議制による給与額算定システムなど公正な制度の構築が求められており、また、給与保障に対する法的な拠り所の明確な設定も求められています。

三瀦先生のコラム