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 第460回対外貿易摩擦あれこれ

(2011年3月28日)

リーマンショック後の世界経済の低迷は必然的に各国に国内産業優先の姿勢を強い、様々な形での保護主義の台頭が多国間の貿易摩擦を惹き起こしやすくしています。中でも経済発展が著しく、かつまた、他国の低迷を尻目に2009年以降も8%台の成長を維持している中国に対する風当たりは強くなる一方です。
リーマンショック直後の2009年第一四半期は、わずか4ヶ月の間に13の国が中国に対して合計38件(前年同期比26.7%増)の不公正貿易調査を開始しました。中でもアメリカが同年4月に中国製のタイヤと油井管に対して反ダンピング・反補助の調査を開始したことに対しては、その金額も大きかったことから中国側の強い反発を惹き起こし、中国側は9月にアメリカの一部自動車部品や鶏肉に対して報復を仕掛ける行動に出ました。
こういった情況はその後も続き、商務部が発表した『国別貿易投資環境報告2010』によると、2009年全体の対中国貿易救済措置は合計116件、127億ドル相当にのぼりました。世界銀行の報告では、世界中で新規に提起された案件の47%、成立した案件の82%が中国を対象としたものでした。従来から中国との貿易摩擦が多発しているのはアメリカとEUで、特にアメリカが全体の半分ほどを占めています。対象品目も鋼材やボルト・ナット、鶏肉と言った工業製品や農産物から、出版物や映画の市場参入問題といった文化産業領域、更にはIT関係にまで拡大しています。その内容を分析すると、これまでの低付加価値製品からハイテク関連など高付加価値製品やサービス産業分野へと対象が移りつつある事が顕著で、それ自体は、言い変えれば中国の経済発展の一つの証とも言えましょう。 
中国側も負けてはいません。ここ二年間の特徴は、中国側も態勢を整えて積極的に反撃に出ている事でしょう。EUとのファスナーや革靴に関する案件のWTO提訴、アメリカやロシアに対する特殊鋼材に関するダンピング調査などはその具体的な例と言えます。
ただ、もう一つこれまでと違う傾向は、欧米以外の発展途上国との摩擦の増大です。ロシアやインドを始め、メキシコ、アルゼンチンなどとも摩擦が顕在化しています。中国自体も政府調達などでの障壁が問題視されましたが、経済大国としての地位を確立するには、中国も、一層の市場の公開、透明度、公正性の向上が求められるでしょう。

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