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 第472回信訪

(2011年6月13日)

『論語』の“不患寡而患不均” が現実の大問題に成っているのが今の中国。急速な発展の結果、貧富の差が拡大して民衆の不満が鬱積し、様々なトラブルが起こっています。2011年2月9日付の人民日報に“信訪”(“来信来訪”の略称。民衆が不満を訴える投書や陳情のこと)に関する最高人民法院への取材記事が掲載されましたが、それによると、当面の“信訪”の特徴として以下の諸点を挙げられています。
① 総量はやや減少するもまだ多発。②北京への直訴は多く、増加傾向にある。③北京への直訴は組織を飛び越えたり、繰り返されるケースが突出。④集団直訴、強引な直訴、突発事件が頻繁に発生。⑤一部の者が“信訪”に名を借りて社会の秩序を乱そうとしたり、不当な利益を図る現象も目立つ。
北京への直訴に対し、陳情者の地元政府が人員を派遣して強引に拉致して連れ戻す事例も度々報告されています。今年3月の全人代の際も北京の陳情局の周りには警察車両が待機し、陳情者を排除する厳戒態勢が敷かれていました。国務院は2010年1月に<各地方政府の北京駐在事務機構の管理強化に関する意見>を出し、年末までに600箇所以上が閉鎖された、と発表しましたが、省レベルの50箇所を含め、依然として350箇所近い駐在機構があり、閉鎖されても形を変えて存続し、陳情者を阻止しているケースも少なくありません。 
新<信訪条例>が施行されたのは2005年のこと。投書や陳情の仕方、それに対する対処の仕方などが規定され、関連法規も各地で400本以上制定され、制度化・規範化・法制化が進みました。更にまた、2010年8月には<人民調解法>が全人代常務委員会で承認され2011年1月から施行されました。“人民調解”とは、訴訟に拠らず、調停で問題を解決する中国独特の方法で、今回の法律では、人民調解委員会の設置・人民調解員の選任方法・調解合意の法的裏づけなどが明確に規定されました。
各地方でも「弁護士参加受付制度」「三級終結制度」「信訪代理制度」など独自の取り組みが行われていますが、“小事不出村、大事不出鎮、矛盾不上交”というスローガンが、庶民の不満を早期に解決する事を意味するのではなく、現場で揉み消そうという方向に働けば、庶民の強烈な反発を生むことになるでしょう。

三瀦先生のコラム