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 第490回東北発展のカギ、吉林省の動き−その1−

(2011年10月17日)

2008年10月、吉林省東端の琿春市からロシアのザルビノ、韓国の束草市、日本の新潟を結ぶ試験航海が行われました。従来、東北地方の貨物は大連経由で日本まで12日間を要しましたが、この航路なら1日半に短縮されます。2011年1月、吉煤グループの石炭が初めて国境を越え、北朝鮮の羅津港から上海へ届けられ、同地方の鉱物資源・穀物・木材等の搬出に光明を与えました。陸路輸送に比べ物流コストが3分の一になるからです。
実はこの話は単に一部物資の輸送にとどまらず、ロシアとの国境貿易に活路を見出している黒龍江省、環渤海湾経済圏の一翼としてまた東北経済圏の海への玄関口として発展している遼寧省に比べ立ち遅れていた吉林省発展の起爆剤に繋がる朗報でもあったのです。このルートが機能し始めれば、それはまた内モンゴル東部、中部地区、更にその先のモンゴル人民共和国にとっても朗報になり、おのずと一大物流網が形成されていく事でしょう。
中国図們江地域協力開発プロジェクトが国連開発計画(UNDP)の提唱で始まったのは1992年のこと。漸く2009年8月、国務院が<中国図們江地区協力開発計画要綱−長吉図を開発開放の先導区とする>を承認、国家戦略に格上げされました(“長吉図”:吉林省の長春市・吉林市・延辺自治州に跨る地域)。横長の吉林省の中心にある長春市から朝鮮国境に至る地域です。先導地区と称するのは国境地域の対外経済協力モデル構築と海陸連携国際輸送ルート開拓を試みる意図があるからです。
吉林省政府もすぐさま2012年と2020年に向けた実施方案を策定、国際的物流ルートや省境協力産業パークの建設を含む10項目の重要任務を確定し、延辺自治州も独自に210の1億元を越える投資プロジェクトを決めました。
従来、吉林省といえば、工業では第一自動車・長春軌道客車・吉林石化が有名、言葉を変えればそれしかない、といっても過言ではなく、「自動車工業が咳きをしたら長春市が風邪を引く」とさえ言われていました。勿論中国屈指の農業省であり、トウモロコシ・水稲・大豆の栽培面積は4800万ムーを超え、畜産業もさかんですが、それだけでは人々の暮らしの向上に不足です。千載一遇のチャンスを手にした吉林省が今どんな具体的なプランで発展を始めているか、詳細は次回に。

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