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 第514回中国スポーツ界の動向

(2012年4月16日)

1年余り前、人民日報に「我々にはどんな金メダルが必要か」という記事が掲載されました(2011.1.10)。きっかけは広州アジア競技大会で199の金メダルをさらった自国に対する評価で、「もう『東亜の病夫』と評された屈辱を晴らそうという時代ではない。金メダルの価値は国旗掲揚・国歌演奏・国威発揚から転換すべきである」「多くの金メダルの陰でこの10年、中国国民、とりわけ青少年の体力は下降を続け、今や肥満率や不健康率は世界のトップクラスだ」と大衆スポーツ、学校スポーツの振興に重点を移すことが力説されました。
同じ頃、劉鵬体育総局局長は第11次5カ年計画を回顧して「2009年の『全民健身条例』が重要な契機となった。その中で関係事業を各行政府の経済・社会発展計画、財政予算、政府事業報告に組み入れる“三納入”が提起され、一斉に実行に移された」と述べ、国民一人当たり1.03平方メートルしかないグラウンドを増やすため、66%のグラウンドが集中する学校の開放やスポーツ指導員の養成に力を入れる方針を示しました。国民の健康増進へのアプローチは日増しに高まっており、一九五一年に始まったラジオ体操も北京市で二〇一〇年八月から、上海市ラジオ局で二〇一一年から再開されています。
こうした動きに沿って、例えば北京市では小中高校646箇所、大学79箇所のスポーツ施設が開放され、問題になっていた引退スポーツ選手の就職難解決策として、彼らをプロの社会スポーツ指導員や体育教師に採用する動きも始まっています。彼らの起用は特に青少年の運動能力向上を図る学校スポーツの振興に繋がりますが、一方で教師としての資格認定や給与財源の問題もクローズアップされており、いたずらに多くの国際的な大会を招致せず、その資金を回すべきだ、と言う議論も盛んになっています。
学校スポーツでは、2009年以来サッカー導入が進められ、2011年には47都市で1770チームが結成され、4万5千人が登録、数年後には7500チーム、50万人とほぼ日本の規模に追いつくと試算しています。また、国民的スポーツである卓球は全国数千万人の愛好者をバックに、2007年から中国卓球協会が全国的な大会を組織、これも空前の高まりを見せています。
「生きるためのスポーツから楽しむスポーツへ」(人民日報2011.4.9)と言う評論は、まさに今の中国スポーツ界の動きを余すところ無く描写していると言えましょう。

三瀦先生のコラム