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 第522回福島原発事故と中国の原子力産業-その1−

(2012年06月11日)

2011年3月の福島原発事故は中国にも大きなショックを与えましたが、これを受けて中国の原発事業はどの方向へ行こうとしているのでしょうか。
福島原発事故の2年前、2009年に、中国では原発建設ブームが起こっていました。4月に中国核工業グループの浙江省三門原子力発電所第一期工事が着工、第三世代原子炉アメリカ・ウエスティングハウス社加圧水炉型AP1000を導入、同12月には中国広東核工業グループの広東省台山原子力発電所が着工、第三世代原子炉フランス・アレバ社欧州加圧水炉型EPRを導入、年末までに10プロジェクト、28基の建設も認可されました。
こうした歩みは、2007年に設立された国家核電技術公司が中心に練った第三世代原子力発電所自主建設化三段階戦略に基づいています。即ち、[第一段階]:外国側を主体として中国側が全面的に参加、4基のAP1000を建設、沿海での標準設計を確立。[第二段階]:中国側が主体になり、外国側がサポート。内陸での標準設計を確立。[第三段階]:完全な自主技術化を達成。CAP1400の標準設計を確立。更に大規模なCAP1700へ向けた予備研究開始。という内容です。
原子力発電への積極的な取り組みには、中国ならではの切実な要請があります。世界的に見れば、原子力発電の占める割合は全電力量の17%ですが、中国では2010年になっても2%を占めるだけ、フランスの70%には及ぶべくもありません。化石燃料による発電が引き起こす環境汚染を極力食い止めるためにも、不安定な風力や太陽熱に比べ安定的な原子力に頼らざるを得なくなるわけです。しかし、沿海ばかりでは広い中国では全国をカバーし切れません。そこで、「世界の原発の60%は内陸にある」ことを理由に上記第2段階を経て、内陸部にも積極的に原発を建設しようと言う方向性が示されたのです。建設プランが加速されたことによって、2020年発電量の従来の目標4000万キロワットは繰り上げ達成され、7500万キロワット(全電力量の5%)に上方修正されました。
一方、建設中の原子炉も加えると、2012年で50基あまり、2020年には100基を超えるというスピードに対し、福島事故の1年前、2010年3月15日付人民日報は、既に中国の原発が安全面で直面している「5つの厳しい試練」を紹介していました。

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