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 第568回医療トラブルへの取り組み

(2013年05月07日)

中国では近年医療トラブルが急増しています。2012年3月には、「ハルビン医科大学第一附属病院で患者がナイフを持って暴れ、一人が死亡、3人が負傷する」という事件も発生しました。こういった流血事件は2011年だけで10件発生しています。“医闹”の原因について、政治協商会議委員の高潤霖氏は次のように分析しています。(人民日報2012.3.21)
① 医療保障が不十分で、患者が死亡した場合、巨額の治療費を支払えず、死亡原因を疑って、賠償を要求する。②医療にも限界があるが、患者側は医療を万能と信じ、コミュニケーションギャップによる説明不足もあって、死亡に納得しない。③患者を焚き付け、関係者を装い、病院をゆすり、上前を撥ねるプロが存在する。時には殴打事件にまで発展する。④110番通報しても、宥めようとするばかりで、毅然とした処置を取らない。医療側が重傷を負って初めて取り締まる。⑤医療側の力量不足、態度の悪さ、コミュニケーション不足。
 中国政府の医療衛生支出は2011年時点でもGDPの1.35%、世界の発展途上国は2%〜8%で、中国は世界でもほぼ最低。しかも都市と農村、東部と西部では大きな格差があるのですから、内地の農村で暮らす人々の悪条件は想像を絶します。同年の外来患者数延べ63億人、公立医院での診療者数延べ20億人、世界の医療費用の3%で世界の20%の人口の健康を守ること自体が至難の業です。
こういった現実を前に、政府は第三者による調停制度を打ち立てる方向を模索しており、浙江省寧波市は2012年3月に<寧波市医療トラブル予防・処置条例>を施行、調停成功率が86.6%に達し、山西省でも90%に達したとのこと。また、衛生部は<医療機構秩序擁護に関する通告>を発して、病院に乱入する行為を厳しく取り締まる方針を打ち出し、同時に同年5月には2級以上の病院に警務室を設けるよう通知しました。
一方、医療側の問題も無視できません。無許可診療、カネ儲け主義による薬漬けや保険の乱用、違法広告、医療技術の低さ、いい加減な診察と責任感の欠如、心づけの強要、冷たい仕打ちは枚挙に暇ありません。「医は仁術」と医学生の徳育をカリキュラムに組み込んだのは温州医学院、福建省ではすべての医者に対する「医徳評価」も始まっていますが、いずれにせよ、絶対的な医師不足、医療施設の貧弱、社会保障の不足の改善が必須です。

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