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 第六回 徳を以って国を治める

「道徳は法律より先に生まれた。そのカバ−する範囲は法律より広い。道徳が無いところは無く、道徳が無かった時代も無い。したがって、およそ、道徳の制約を受けない社会規範は無く、法律もまた、例外ではない。」
 「優れた道徳は法律規範の主要な価値目標の1つであり、善悪を判断する主要な基準の1つであるとともに、法を執行する場合の基礎でもある。」
いずれも、今年、2月21日に、人民日報に掲載された文章からの抜粋です。全国的に蔓延し、経済を蝕むニセモノ作りの横行。その根本原因は道徳心の欠如に有る、と企業道徳の確立を提唱するのは、河北省卓達グル−プ総裁の楊卓穂氏。法律により厳しく取り締まる"依法治国"と、社会のモラルを確立することによる"以徳治国"があいまってこそ、初めて健全な国造りが可能になる、という考えです。地域社会のモラルを高めようと早くから"三徳"(社会道徳、職業道徳、家庭道徳)の建設に取り組んだのは同じ河北省の石家庄市。タクシ−の応対などに着実な成果が見られた、とのこと。
卒論、修士論文、博士論文、一般学術論文のニセモノが横行し、甚だしきは一本数十元で論文が売買されている大学でも改革の声が上がっています。2001年8月、南京大学の若手研究者から、学術界にもモラルを、と"以徳治学"の呼びかけが行なわれました。
 このように国民全体の道徳心の涵養が叫ばれる中、今、熱い期待を寄せられているのが儒学の教えです。山東省曲阜の孔子廟は立派に修復され、儒学の研究が日増しに盛んになっていますし、儒学部を擁する孔子大学の設立も進んでいます。 2001年、社会科学院は、儒家思想は宗教ではなく、"教化之教"である、というお墨付きをあたえました。国際的な儒学研究会議が北京で開催されたのはもう数年前。省レベルの指導者が、21世紀の発展の思想的基盤として、“修身、斉家、治国、平天下”の語句を堂々と共産党機関紙人民日報に披瀝し始めたのも1年以上前の話。
「衣食足りて礼節を知る」。"以徳治国"が論じられるようになったのは、WTO加盟に向け、企業モラルの育成が急務、というせっぱ詰まった事情に加え、中国が一定の発展段階に到達したことを示す1つの証左かもしれません。

三瀦先生のコラム