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 第605回 司法制度改革

(2014年02月03日)

2013年11月18期三中全会の焦点の一つが「法治中国建設の推進」。「法に則った“治国・執政・行政”を推進し、法治国家・法治政府・法治社会を建設しよう」と謳い、司法体制改革の深化を標榜しています。具体的にはまず、憲法の絶対的権威を掲げ、科学的な法治建設指標システムとチェック基準を整えるとともに、第32項で、裁判権と検察権の独立と公正を守るために、地方裁判所と検察院に関する人事・予算・物件を統一管理として、行政区画と切り離した司法管理制度を模索することが盛り込まれています。
同項ではまた、司法人員管理制度の確立も掲げられています。全国の裁判官の数は19.6万人で全国の裁判所人員の58%しかなく、日経記事の元幹部の証言では「大学で法学を専攻した者は半分ほど」とのこと(2013.11.12付)。同年7月に開催された全国法院隊伍建設工作会議は、2018年までに3000人の専門家を、少数民族地区ではバイリンガルの人材1500名を養成、「正規化・専業化・職業化」の「三化建設」を進める方針を打ち出しました。
第33項では司法活動に対する法による監督、社会による監督が謳われています。社会による監督で最近顕著に取り上げられているのが情報の公開。取り調べや裁判状況の録音録画や裁判中継が主要な取り組みとして挙げられていますが、司法側に有利な部分や差障りない部分についてのみの公開であれば、その意義は大幅に減殺されてしまいます。同じことは2013年7月の<最高人民法院判決文ネット公開暫定規則>にも言えることで、「国家機密・商業機密・個人のプライバシーに関する内容は閲覧できない」という制約に対する解釈の範囲が焦点になるでしょう。また、最高人民法院は、人々の意見を一層反映させるため、人民陪審員の数を2年以内に倍の20万人位まで増やし、その3分の2以上を末端の民衆から選任すること、裁判所を監督する特約監督員42名を各界から招聘するなどの方針も発表しましたが、これも選任の仕方自体が厳しくチェックされなければなりません。
このほか、最近は誤審やでっち上げによる冤罪の認定や民事訴訟の公正化への取り組みなども進められていますが、「新公民運動」の著名な活動家、許志永氏に対する昨今の懲役4年の判決は憲法の権威と抵触するとの指摘がありますし、最高人民法院にも弁護士業にも党組織がある以上、不当な介入に対しどこまで阻止できるのかも不安視されています。

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