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 第646回 海のシルクロード計画

(2014年11月25日)

“一帯一路”という言葉が最近よく聞かれます。2013年10月に習近平主席がインドネシアの国会で行ったスピーチで提起され、その後、同年11月の18期三中全会、2014年3月の全人代でも提唱されたこの構想が今、徐々に具体化されつつあります。
“一帯一路”とは「シルクロード経済帯」と「海のシルクロード」を指します。「シルクロード経済帯」は陸のシルクロードでもあり、このコラムでも既に紹介しているように、今日ではユーラシアランドブリッジを指します。ルートで言えば重慶市や陝西省から青海省や甘粛省を経てウルムチに至り、そこから中央アジアの国々やロシア、ベラルーシを通ってポーランド、ドイツ方面に抜けていきます。これに対し、「海のシルクロード」は浙江省、福建省、広東省、海南省、広西チワン族自治区などの沿海各地域(急速な交通インフラ整備により、その後背地である江西省、湖南省、貴州省なども巻き込む)からシンガポールを通ってインド、更に中東へとつながるのですが、この陸と海のシルクロードに囲まれた空間を補うものとして、雲南省の昆明からメコン河沿いに展開するグレーターメコン経済圏、同じくラオス、タイからマレーシアを通ってシンガポールへ抜けるルート、更には、中国、ミャンマー、バングラデシュ、インドを結ぶ経済回廊や中国とパキスタンを直接結ぶ経済回廊などが構想され、これらを複合させ、ユーラシア大陸に中国を元締めとした巨大な経済圏を育てていこう、という壮大なプランなのです。
現在の世界では、多国間のFTAによる経済圏作りがしのぎを削っています。TPPしかり、RCEP然りですが、中国は漢代のシルクロード、明代(鄭和など)の海上交易双方を手本としつつ、陸海両睨みの発展戦略を着々として実行に移しています。最近のアジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS開発銀行設立構想はまさにこれに呼応するものと言えましょう。周辺諸国との経済関係を強化し、これを中華経済圏の衛星国に取り込み、陸路と回路の両翼でユーラシアを懐に抱き込むためには、「“周辺”“陸上”“海上”」は中国外交の基本設計であり、どれ一つでも欠けてはならない」とは広東国際戦略研究院周方根教授の弁(2014.6.27人民日報)。今、この構想を低迷する国内経済の突破口としようと、福建省、広東省、広西チワン族自治区、雲南省などでは次々と意欲的なプランが始動しています。

三瀦先生のコラム